象印マホービンの家電「STAN.」シリーズは、デザイン部門が中心に企画・開発を主導した。2019年に発売し、21年11月でシリーズ売上高が約37億円に達し、次第に存在感を増している。20~30代の共働き・子育て世代を狙った背景などについてデザイン室長の堀本光則氏に聞いた。
――なぜ「STAN.」シリーズを立ち上げたのでしょうか。
堀本光則氏(以下、堀本) 当社のイメージを調査すると、幅広い年齢のお客さまに支持されているものの、20~30代への浸透がいま一歩でした。2018年に創業100周年を迎えるに当たり、こうした共働き・子育て世代を改めて開拓しようと、新ブランドの企画が動き出しました。
一方で当時、デザイン性を押し出した、いわゆるデザイン家電が新興メーカーから登場して注目を集めていました。そこで経営トップから、デザインにフォーカスした新ブランドを立ち上げたらどうか、となったのです。
新ブランドといっても「20~30代の共働き・子育て世代」「まずは炊飯ジャーをラインアップに入れる」など、ざっくりとしたイメージしかありませんでした。それでも今までの当社のイメージとは違う新しいデザインを求めて複数のデザイン会社に依頼し、デザイン案を作成しました。結果、TENT(東京・目黒)の案を選択したのです。
堀本 光則(ほりもと みつのり)氏
象印マホービン デザイン室長
象印マホービン デザイン室長
1994年に象印マホービン入社。プロダクトデザイナーとして、これまで炊飯ジャー、電気ポットなど、数々の製品デザインに従事。2012年より現職。「STAN.」シリーズでは、プロジェクトリーダーとして、デザインやブランディング全般に携わる
象印の原点を反映したデザイン
――TENTからは、どんな提案があったのでしょうか。
堀本 TENT側が出してきたキーワードは「うつわ(器)」。炊飯ジャーのデザイン案は、上に向かって広がっていくスタイリングと、底部分の質感の切り替えが新鮮な印象でした。
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