2000年代後半に上陸し、一世を風靡した「クリスピー・クリーム・ドーナツ」。ブームが落ち着き苦境に立たされたが、何と今、驚異の復活を遂げている。なぜ再び光を取り戻したのか。背景を探ると、地道な現場改革の試行錯誤があった。復活劇をけん引したクリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン社長の若月貴子氏にその軌跡を聞いた。
米国生まれのふわふわで甘い「オリジナル・グレーズド」で、一躍人気ドーナツブランドとなったクリスピー・クリーム・ドーナツ。2006年12月、東京の新宿サザンテラスにオープンした1号店では、日本初上陸のドーナツを買い求める人が連日行列をつくったことを覚えている人も多いだろう。
破竹の勢いで全国各地へと展開し、15年には64店舗へと拡大した。ところがブームは長くは続かず、一転して16年1~3月に大量閉店を敢行。46店舗まで縮小したことで、「クリスピー・クリームはもう終わった」と評する人もいた。
だが、この16年の大量閉店は「復活のために、身の丈に合った規模へ一度縮むことが目的だった」と、クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン社長の若月貴子氏は話す。若月氏は14年に副社長に就任し、マーケティング部門を統括。この大量閉店を主導した。
拡大路線に限界 店舗運営力の低下が顕著に
同社の苦境の原因として若月氏が挙げるのが、店舗運営力の低下だ。「上陸当時、想像を超えた大きなブームが来てしまったことで、その後は右肩下がりの状況になるのは目に見えていた。だが、新規出店という形で業績の拡大を進めたことで、店舗の運営力が低下し、既存店の売り上げは下がり続けてしまった」と若月氏は振り返る。当然、新規出店にも限界が訪れ、既存店の売り上げ低下をカバーしきれなくなっていったのだ。
上陸後の拡大戦略を進めていた当時、店舗運営のノウハウは属人的で、新規出店時には既存店にいた経験値の高い“エース社員”を異動させて対応していた。新店舗を早急に軌道に乗せるためだ。だが、必然的に既存店の力が低下し、経営資源が分散してしまうという負のスパイラルに陥っていった。
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