人気店のラーメンをEC(電子商取引)で販売する「宅麺.com」。新型コロナウイルス禍の巣ごもり需要を受け、2021年3月期の売り上げは前年同期比3.5倍へと急拡大した。従来は、流通プラットフォームとして加盟店のEC販売を主にしてきたが、2022年、供給が追いつかない人気ラーメン店に代わり、EC用ラーメンの製造を行うためセントラルキッチンの稼働を開始。宅麺自ら製造に乗り出した。その狙いとは。
指原莉乃もファンを公言。コロナ禍でラーメン愛好家の救世主に
「私、今ハマっているものがあって」――。
タレントの指原莉乃さんがテレビで紹介したのは、ラーメンECサイトの「宅麺.com(以下、宅麺)」。指原さんは新型コロナウイルス感染症の拡大前からTwitterで宅麺について触れていたが、感染拡大後の自粛期間中、より「ハマった」ようだ。
前述の発言は、宅麺から宣伝を依頼したものではない。あくまで一ユーザーとしての生の声だという。
宅麺は、人気ラーメン店の味を「そのまま」自宅に届けるラーメンのECサイト。お店の味を再現できる秘訣は、店頭で出しているスープを濃縮せず、そのままの状態で冷凍して届けることにある。
「中華蕎麦 とみ田」「風雲児」「ちばから」など、全国185店舗の有名ラーメン274商品(22年2月時点)のみを扱い、2010年7月のサービス開始から約12年たった今なお、全国にファンを広げ続けている。会員数は34万人(同)に上る。
20年4月、1回目の緊急事態宣言が発令された直後、変化が起きた。きっかけは、オンラインメディア「マネー現代」に掲載された1本の記事だった。
「外出自粛中のラーメン通たちを救う存在…?『宅麺』とは何者か」と題された記事が、Yahoo! ニュースのトピックス一覧に取り上げられたのだ。瞬く間に宅麺の名前は広がり、「3カ月で16回テレビに出演した」と、運営元のグルメイノベーション(東京・渋谷)、井上琢磨代表取締役は当時を振り返る。
僅か1時間で5000食が完売、急成長支えた販売手法とは?
急激な知名度上昇により、ECサイトに商品をアップした直後から完売する事態が続いた。宅麺は、外部の物流倉庫を利用している。出荷数に上限があるため、1日当たり最大5000食までしか販売できない。また当時は、EC需要全体が伸びていることもあり、物流倉庫を利用している他のEC事業者も軒並み出荷量が増えていた。
「販売量を増やしたくても増やせない」状況が続き、用意した5000食は、「販売開始から1時間で、きれいになくなった」(井上氏)。
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