Meta(旧Facebook)を筆頭に大手IT企業が次々と参入し、盛り上がるメタバース市場。仮想空間で人と人とがコミュニケーションし、ビジネスを展開する世界が見え始めてきた。そんななか登場したのが仮想空間で電子コミックを読む「VR漫画」だ。VR空間のなかで、まるで本物の本のようにページをめくったり、読む場所を瞬時に変更したりできる。VR漫画は読書体験を変えるのか。その可能性を探った。
コロナ禍の巣ごもり需要を背景に、電子出版の市場が拡大している。出版科学研究所によると、2021年(1~12月)の出版市場全体における電子出版の占有率は27.8%と3割に迫る勢いだ。なかでも電子コミックの市場規模は前年比20.3%増の4114億円。すでに電子出版のほぼ9割をコミックが占めている状態だという。
スマホやタブレットで漫画を読むことは読書スタイルの一つとしてすっかり浸透したが、21年秋に電子コミックの新しい楽しみ方として登場したのが、仮想空間で電子コミックを読む「VR漫画」だ。
電子書籍取次のメディアドゥが21年10月にリリースした「コミなびVR」は、同社が運営する電子書店「コミなび」で扱うコンテンツをVR空間で楽しめるアプリ。「Meta Quest(旧Oculus Quest)」や「同2」専用のアプリで、インストールしてVRゴーグルをかぶれば、選んだ漫画本が仮想空間に浮かび上がる。
目の前に登場するコミックを広げると、両ページがわずかにアーチ状になり、実物の本のようにリアルな存在感がある。コミックの位置や向き、サイズなどは自在に調節が可能で、1ページを新聞ほどのサイズに拡大したり、本を回転させて寝転んで読んだりすることもできる。
実際に使ってみてまず驚いたのが、ページめくりだ。コントローラーのスティックを左右に倒すと前後のページを表示できるが、その際、本物の紙のように絵が描かれたページがぱらぱらとめくられる。十数ページを一度にめくる操作をしても、どんな絵が描かれているか分かるほどだ。開発を担当したメディアドゥ IPマーケティング企画室シニアプロダクトデザイナーの木下将孝氏は「前後のページを先にメモリーに読み込ませておくことで、絵を表示しながら高速にページをめくれるように設計した。実際の本と同様の体験を提供するために開発した特許技術の一部」と話す。
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