Radiotalk(ラジオトーク、東京・港)は、無料で自分のラジオ番組が配信できるアプリだ。21年末には、広告出稿によるプロモーションなしで配信者(トーカー)が累計10万人を突破。月1200人が「稼ぐ配信者」となり、年間1000万円以上を売り上げる人気トーカーも登場した。どんな仕組みが配信者やリスナーの人気を呼んでいるのか。井上佳央里社長に聞いた。
元営業マンの50代おじさん、毎朝7時に配信する20代サラリーマン、ゆとり世代の女性フリーター……。「誰でも今すぐ始められる音声配信サービス」を提供するラジオトークでは、「おしゃべり」で稼ぐ配信者が続々と誕生している。元営業マンの50代おじさんは2021年、年間1000万円以上を売り上げ、会社を辞めて専業トーカーになったという。
ラジオトークは、音声配信サービスのアプリだ。日本大学芸術学部放送学科でラジオ番組の制作を学んだ井上佳央里社長が「話す人がもうかる仕組み」を構築しようと立ち上げた。井上氏が新卒で入社したエキサイトの社内ベンチャー制度で17年にベータ版をリリース。19年3月からはネット関連事業を展開するXTech(東京・中央)の子会社「Radiotalk」で、音声プラットフォーム事業を展開している。
17年のベータ版立ち上げから現在までを振り返り、井上氏は配信者やリスナーを伸ばした理由を3点挙げる。
(1)簡単に実力以上の配信ができる(配信者増)
誰もが配信しやすい仕組みとして提供しているのが、InstagramやTikTok同様の「簡単操作」と「盛る」機能だ。アプリを開いてマイクボタンをタップし、収録(配信)かライブ(配信)かを選べば配信スタートできる。
音声には、ワンタップでボイスチェンジができるエフェクトをかけたり、効果音を入れたりできるので、インスタで画像を「盛る」ように、簡単に声を装飾して楽しむことができ「複雑な編集技術を持っていない人でも、実力以上の配信ができる」(井上氏)
また、12分という制限時間を設けた点も、配信のハードルを下げた。「ベータ版を出した4~5年前は、音声配信の型が全然見えていなかった。そこで、Twitterが140文字の制限を設けたように、12分という配信のフォーマットを作り、音声配信の(どうやるか、どんなものをつくるかといった)型を配信者が想像できるようにした」(井上氏)。
(2)SpotifyやAmazon Musicで配信(配信者、リスナー増)
(1)の配信しやすさから、「インターネット上の何らかのクリエーターになりたいという人が集まってきた」と井上氏。配信者の約8割が35歳以下で男女比は半々だ。「動画配信サービスでは、ビジュアル面の影響が大きい。一方で、ラジオトークはコンテンツ力が人気を左右する」(井上氏)
クリエーター気質の配信者がいち早く集まったことで、ポッドキャストコンテンツを充実させたいSpotifyから声がかかった。現在では音声配信サービスで唯一、Apple、Amazonなど各社のポッドキャストに自動配信ができるという。
YouTubeやTwitterなどのSNS上でも制限なくラジオトークのコンテンツをシェアできる。年齢不詳の人気配信者「もののけ」氏は、YouTubeで総再生数が4000万回を超え、YouTube上でも収益化を遂げている。また、ファンが「もののけ」氏のコンテンツを切り抜いた動画を作成してTwitter上に「#もの抜き」として拡散。認知が広がり、「たまたまYouTubeで見た、Twitterで見た、といった視聴者が新たなリスナーとしてラジオトークに訪れる循環も生まれている」(井上氏)。
(3)ライブ配信のスタンプ付与による売り上げ増(配信者、リスナー増)
配信者とリスナーの伸びに拍車をかけたのが、20年9月に始まったライブ配信のスタンプ付与機能だ。リスナーは、ただ聞いているだけではない。「なんでやねん」「わかりみ(よく分かる)」「草(笑いを意味するwマークと同義)」など、「ラインスタンプのようにリアクションに寄せた有料スタンプを、リスナーが投げ銭(ギフティング)できるようにした」(井上氏)。
ギフティングを備えた動画配信サービスでは、「100円」など贈った金額が表示されたり、色付きのコメントを贈ったりできるものがある。だが、ラジオトークでは金額そのものよりもリアクション(スタンプ)を贈ったほうが盛り上がると判断した。
スタンプは15円から100円。高いものだと1000円、最高額は3万円のスタンプがあり、金額に比例したサイズのスタンプが流れる。ちなみに3万円のスタンプは、音楽が流れて画面いっぱいに流星群が現れるそうだ。
「人気のライブ配信では、配信終了間際にスタンプが続々と贈られて、熱狂が冷めず時間延長されるケースも」(井上氏)。配信者の盛り上がりにリスナーが巻き込まれ、まるで飲み会で騒いでいるときのようなテンションになることも多いという。
リスナーのリアクションがリアルタイムで可視化され、配信者とリスナーとがコミュニケーションをとれる楽しい時間が、収益化のポイントとなっている。
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