ド派手な衣装の松平健(マツケン)が、群衆を引き連れ「マツケンサンバ」を踊りながら近づいてくる――。2021年11月から放映された牛丼チェーン「松屋」のテレビCMシリーズが、Twitterで反響を集め、YouTubeのCM動画には「めちゃくちゃで面白い」といった趣旨のコメントが多数寄せられた。確かに目を引くが、キャラが強烈過ぎるが故に、商品メッセージのCMでマツケンを生かし切るのは想像以上に難しい。その難題をどう克服したのか。制作の裏側に迫った。

松屋がテレビCMシリーズを放映するのは2011年以来。松平健の起用とマツケンサンバでインパクトを打ち出した
松屋がテレビCMシリーズを放映するのは2011年以来。松平健の起用とマツケンサンバでインパクトを打ち出した

狙いは「弁当予約サービス」の浸透

 「松屋」を展開する松屋フーズにとって、2011年以来となるテレビCMシリーズがSNSを中心に大きな反響を呼んでいる。内容は松屋の弁当予約サービス「松弁ネット」にフォーカスしたもの。21年11月に第1弾「みんなの! マツベンサンバ編」を、そして同年12月末には第2弾「待たない! マツベンサンバ編」の放映を開始した。松屋フーズ広報グループによれば、第1弾の放映後「面白い」「元気が出る」といった好意的な反響が数多く寄せられ、ネット注文サービスの新規会員数が増え続けているという。勢いに乗り、22年3月にはシリーズ第3弾を公開する予定だ。

 CMのタイトルからもうかがえるように、おなじみの金ピカ衣装をまとった松平健が、「マツケンサンバ」の楽曲とともに登場する。松屋のテークアウト弁当を指す通称「松弁(マツベン)」とマツケンサンバの曲名をかけて、弁当予約サービスの認知拡大を狙った。

 第1弾「みんなの! マツベンサンバ編」では、マツケンサンバを踊る松平健が群衆を引き連れながら坂道を上ってくるシーンから始まる。集団は部活帰りを思わせる学生、スーツ姿のサラリーマン、羽目を外す新成人、スクーターに乗ったおばあちゃんなどでにぎわう。老若男女さまざまな一団だが、皆その手には松弁を持っており、楽しそうに行進していく。やがて背後から松弁を運ぶドローンが現れ、最後には大量の松弁をぶら下げたヘリコプターまで登場する。あまりの非日常ぶりに、開いた口がふさがらないほどだ。

第1弾「みんなの! マツベンサンバ編」。松屋にもテークアウトサービスがあることを認知してもらう目的で制作された

 制作を担当した電通CMプランナー/コピーライターの茂庭竜太氏は、活気ある演出とお祭り感のあるマツケンサンバに、弁当予約サービスが広く浸透する狙いを込めた。

 「松屋の企業スローガンが『みんなの食卓でありたい』なので、世代を問わずなじみの深いマツケンサンバはちょうどよかった。21年8月には、東京オリンピックの開会式にマツケンサンバを待望する声も多く、『国民的お祭りソング』として認知度も高い。CMの雰囲気としては、アットホーム感よりも景気づけを意識し、インパクトが残るよう制作した」(茂庭氏)

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