コロナ禍で電子商取引(EC)市場が急成長を見せ、リアル店舗の価値が改めて問われている。そんななか、店舗のデジタル化の一手として導入が広がっているのが、サイネージ(電子看板)だ。AI(人工知能)カメラと連動して顧客データを蓄積、効果的な販促につなげる取り組みが始まっている。
「デキる! 男肌の作り方!!」
独特のフォントの店頭販促(POP)で飾られたファイントゥデイ資生堂(東京・港)の男性向け美容ブランド「ウーノ」の棚。MEGAドン・キホーテ渋谷本店(東京・渋谷)に設置されたデジタルサイネージ(電子看板)では、複数の画面に連動した映像が流れ、客を呼び込んでいる。客が棚の目の前まで来るとタブレットの画面が切り替わり「印象を変えたい」「毛穴が気になる」などの中から肌の悩みを選択できるようになる仕組みだ。
若い男性客が「テカリ・カサつき」を選択すると、ディスプレーに「オールインワンクリーム」と「BBクリーム」を薦める画面が表れた。さらにクリームが並んでいる段に設置されたディスプレーが「商品をCHECK」と赤く光り、男性の目線を誘導する。男性は薦められたクリームを手に取ると、再びディスプレーに表示された商品の特徴に目を通し始めた。
同店にこのサイネージが設置されたのは2020年12月。新型コロナ下でインバウンド需要が落ち込むなか、来店客に対するアプローチを強化する狙いで導入した。設置前後で1カ月間の売り上げを比較したところ1.6倍と結果は上々。渋谷での成功を受け、その後札幌、仙台、名古屋のドン・キホーテにも拡大している。
サイネージのデータ分析で商品提案力を強化
新型コロナ下ではサンプルを設置するのも難しくなり、客に商品の魅力を伝えづらくなった。ウーノのマーケティングを担当する大野日向子氏は「悩みに合わせた商品の特徴を紹介することで購買意欲を高めることができた」と話す。
さらに棚の前の通過人数や滞在時間、日時なども集計している。テレビで流したコマーシャルや、アニメのキャラクターを使用した映像など複数パターンのコンテンツの数字を比較し、効果を見極める考えだ。
肌の悩みを入力する前には「学生」「社会人(中年)」など使用者の属性を入力してもらい、各属性の客が抱える悩みのデータを蓄積。今後は、肌の悩みに基づく提案だけでなく客の年代も考慮して商品を提案できるようにしていく。
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