リアルの店舗の価値とは何か、再び考えるときがやってきている。コロナ下でネット通販の利用はさらに増え、これまでのように単純に商品を並べて売るだけの店に、消費者はもはや魅力を感じなくなってきた。新たな時代では「モノ」に加えて「すること」「感じること」の提供が求められている。リアル・デジタルの双方の力を生かした接客力も重要だ。
カナダのルルレモン・アスレティカがアパレル業界の地図を塗り替えようとしている。2021年1月期の売上高は44億ドル(約5000億円)ほどだが、時価総額はスウェーデンのヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)を上回る。
1998年創業のヨガウエアブランドで伸縮性の高い機能性素材が強み。アウターやワンピースなど日常シーンで使える商品も豊富だ。メンズ向け「ABCパンツ」の日本での価格は1万6800円と、低価格を武器にしているわけではない。
その強さは、ウエアを単純に売るだけでなく、ヨガやフィットネスなどの「すること」を提案していることにある。「エデュケーター」と呼ばれる店員は、自身もフィットネス愛好家で、商品だけでなくヨガやフィットネスに関する情報も教えてくれる。
ルルレモンは草の根のヨガイベントなどを通じて、コミュニティーをつくって成長してきた歴史を持つ。ヨガのインストラクターとして登録した人に割り引きするなどし、口コミで広げていった。「体験型ブランド」とも呼ばれるゆえんだ。
現在、日本では毎週土曜朝に無料で参加できるオンラインフィットネス講座を開催している。コロナ禍でリアルのイベントができなくなったためオンラインシフトしたが、「従来アプローチできなかった新しい層にフィットネスを届けるチャンスにつながっている」(日本法人のスチュワート・テューダー社長)。
「すること」提案がリアル店舗の強さの条件に
ユナイテッドアローズも「モノ」を売るために、まず「すること」から入る。
「今年最後のクラス、体をデトックスして終わりましょう」
21年12月中旬の土曜日午前9時半。ビンテージのサーフボードや黒いウエットスーツが並ぶサーフショップ「カリフォルニア ジェネラルストア」(神奈川県藤沢市)の店内では、約10人の参加者がインストラクターの指導のもと、色とりどりのマットの上でヨガをしていた。
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