2021年もさまざまな火種をきっかけに「ネット炎上」が多発した。炎上トラブルに興味を持って検索するユーザーも右肩上がりで増えている。企業にとって難しいのは、ネーミングや広告展開を決めた当時は特に問題視されなかったものが、ジェンダー平等やダイバーシティーの意識向上で後から問題になるケースが増えていることだ。その事例を挙げながら、対策について考察する。
<前編はこちら>
まず、以下のグラフをご覧いただきたい。
上図はGoogle Trendsで「炎上」の過去10年間の検索ボリューム推移について調べた結果である。増減を繰り返しながらも右肩上がりで推移していることが分かる。
気になったことを手元のスマートフォンですぐに検索して調べるようになって久しい。検索ボリュームは、人々の関心事の大小がそのまま表れると言える。「炎上」の検索ボリュームが右肩上がりということは、それだけ世の人々が炎上トラブルに興味関心を持っていることになる。
もうはるか昔のことのように感じられるかもしれないが、「女性がたくさん入っている会議は時間がかかる」という発言で、東京オリンピック(五輪)・パラリンピック大会組織委員会の会長だった森喜朗氏が辞任したのは2021年2月の出来事だった。
翌3月には、五輪開閉会式の演出を統括する立場だった佐々木宏氏が前年(20年)の3月、タレントの渡辺直美さんにブタを演じさせるプランを関係者に提案していたことが『週刊文春』で報じられ、やはり辞任に至っている。
そして開会式直前の21年7月には、ミュージシャンの小山田圭吾氏が過去に雑誌のインタビューで障害者イジメを自慢げに告白していたことで、また元お笑いタレントで演出家の小林賢太郎氏がかつてホロコースト(ナチス・ドイツによるユダヤ人大虐殺)をお笑いのネタに使っていたことで、それぞれ開会式の演出陣から外れることになった。
こうした五輪を巡るいざこざが頻発したことが、人々の炎上への関心を高め、検索行動を促した格好だ。
上記の五輪に関連する炎上事例は、企業が引き起こす、あるいは巻き込まれる炎上とはあまり関係がないように思われるかもしれないが、気になるのは森発言を除くと、いずれもリアルタイムの失言ではなく、過去の言動が掘り返される形での炎上だったことだ。
過去の発信内容が掘り返されて批判される「時間差炎上」は企業にも起きている。
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