コンビニと青果店が急接近している。ローソンで急増しているのが、地元の青果店が朝仕入れたばかりの野菜や果物を販売する店舗だ。仕入れや価格の決定権は青果店が持ち、店頭には旬の果物や目玉品が並ぶ。取り組みは北九州を拠点に関東などに拡大。コンビニが画一的な品ぞろえから脱して、地域ニーズに合わせて大きく変わろうとしている。
2021年11月2日、千葉県柏市にオープンしたローソン柏南増尾一丁目店。店前に広がる野菜・果物売り場で、近くに住む60代の女性が1個158円のラ・フランスを手に取って思わず歓声をあげた。
店頭に並んだラ・フランスは山形県産の初物。地元の青果店の関係者が、栃木県の中央市場の仲買人から連絡を受けて、急きょ仕入れた目玉商品だ。「ラ・フランスは売れ残り覚悟の賭けだったが、一番売れている。苦労して仕入れたかいがあった」(青果店関係者)と笑顔をみせた。
オープン初日に用意したのは、ラ・フランスのほかリンゴやジャガイモなど15種以上。売上高は4万円を超えた。産地が限られる果物を除くと、栃木県産のトマトや長ネギなど、その多くが関東の野菜だった。
千葉県北部の約160店を担当するローソン埼玉・千葉営業部の清杉将実支店長は、「新鮮な野菜を八百屋さんが仕入れるので、鮮度は近隣スーパーに引けを取らない」と説明する。こうした野菜や果物の取扱店を、21年度末までに約70店まで広げる考えだ。
清杉支店長は、青果の品ぞろえが充実すると「コンビニの顧客層は変わる」と話す。オープンした柏南増尾一丁目店は60歳以上の利用が目立つ。70代の主婦は「足腰が弱くなって、歩いて5分のスーパーに行くのも面倒。徒歩3分のコンビニで野菜を買えるならありがたい」と話す。
ローソン「北九州発モデル」が広がる
ローソンと地域の青果店との連携は北九州市から始まった。仕掛け人は青果市場の売買参加者でつくる組合の理事長を兼ねる高上青果(同市)の高上実社長。コロナ禍で飲食店向け取引が減り、組合員の青果販売は20年、19年の約半分に。そこで「新しいモデルをつくれないか」と考えてローソンに20年末、声をかけたのがきっかけだ。
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