2021年10月、マンホール蓋を探して撮影する謎のイベントが話題を集めた。水道関連事業を80年以上も手掛ける“黒子企業”日本鋳鉄管がWhole Earth Foundation(WEF)と共同で実施しているゲーム「鉄とコンクリートの守り人」を活用したイベントだ。その名も「#マンホール聖戦」。人気イベントが生まれた理由と背景に迫ると、DX推進や新規事業創出のヒントが見えてきた。
2021年10月、東京23区ではスマホを片手にマンホールを探す人の姿が突如現れた。その人たちの目的はただ一つ、マンホールの写真を撮るためだ。
そんな謎現象を巻き起こしたのが、「第3回#マンホール聖戦『東京23区コンプ祭り』」。シンガポールに拠点を置くWhole Earth Foundation(WEF)と日本鋳鉄管が共同で実施しているゲーム「鉄とコンクリートの守り人」を利用したイベントだ。
参加者は、東京23区全域のうちの危険な場所にあるものを除く約40万基のマンホールを探し出し、蓋の画像を投稿する。そうして、全マンホール蓋の画像の収集を目指す。同イベントが公表されると、SNSでは「すばらしい発想」といった声が投稿され、大きな反響を呼んだ。
マンホールを撮影? 何のためのゲームなのか
そもそも鉄とコンクリートの守り人とはどのようなゲームなのか。
プレスリリースによれば、「国内のインフラ老朽化の課題に対し、日本にあるすべてのマンホール蓋を守り人(プレイヤー)が力を合わせて撮影・投稿し、ポイントや特典を得ながら、インフラの安全を確保することを目的とした『社会貢献型位置情報ゲーム』」だという。
プレーヤーはウェブアプリにログインし、街にあるマンホールを探す。周囲の写真とマンホール蓋の写真をセットで投稿して登録する仕組みだ。#マンホール聖戦はこの仕組みを活用し、期間と地域を区切って実施。参加者は地域内のマンホール蓋のコンプリートを目指す。
#マンホール聖戦は、まず21年8月に渋谷区を対象に実証実験としてスタート。同区には1万基ほどのマンホール蓋があるが、初回にもかかわらず700人ほどが参加し、僅か3日足らずでコンプリートする事態になった。「従来の検査スピードでは何年もかかる規模」と、日本鋳鉄管社長の日下修一氏は驚きを隠せない。
続く9月には、新宿区、中野区、港区の3区を対象とした第2弾イベントを実施。さらに10月には、東京23区を対象とする大型イベント「第3回#マンホール聖戦『東京23区コンプ祭り』」を敢行した。
その対象は東京都外にも広がる。21年11月6日からは、石川県の加賀市で「マンホール聖戦 in 加賀市」を実施。約8000基のマンホールを対象に行われたが、なんと開始1日でコンプリート率は95%に達した。その後も勢いは衰えず、1日半で全マンホール蓋の画像収集が完了したのだ。
初の地方開催となった同イベントでは、市長がリーダーシップを執り、教育委員会を経由して小中学校へ案内の配布を行った。その結果、家族で参加する姿も見受けられ、地域住民を中心に幅広い年齢層の取り込みに成功した。
東京23区、さらには加賀市での実施を通じて、サービスのアップデートを繰り返し、ついに21年11月20日から12月12日まで、全国を対象とした「第4回#マンホール聖戦~全国出陣祭り~」を開催。各地で地元のマンホールをコンプリートしようと、熱い撮影競争が繰り広げられた。11月の全国拡大時点で、鉄とコンクリートの守り人の登録者数は2万人を超え、12月中旬時点では3万人も突破している。
インフラ老朽化の救世主? 謎ゲームが生まれたワケ
日本鋳鉄管は、そもそもなぜマンホール収集をゲームの題材としたのか。
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