画像・動画共有サービス「Pinterest」が日本でも勢力を拡大している。2021年にMAU(月間利用者数)は870万人(ニールセン デジタル調べ)に達した。SNSに括られがちな同サービスだが、実は画像検索としての利用が消費を生み出している。21年10月にはアマゾンジャパン(東京・目黒)などで広告事業に携わってきた成田敬氏がピンタレスト・ジャパン(東京・渋谷)のカントリーマネージャーに就任し、22年前半から広告事業を本格化させる。成田氏が就任後初めてメディアの取材に応じ、広告の特徴や有効的な活用法を語った。
Pinterestはインターネット上から気に入った画像や動画を収集して、自分のデジタル上のピンボードに集めていくスクラップブックを作り、他の利用者と共有するSNSとして始まった。集めたコンテンツを利用者間で自分のボードにコピーするなどして、流通させる仕組みだった。「Facebook」や「Twitter」などと並び、写真や動画に特化した次世代のSNSとして人気を集めた。13年に日本法人を設立し、本格参入。参入に先駆けて楽天が出資するなど、注目度は高かった。
ところが、国内では他のSNSに比べてサービスは伸び悩んだ。ビジュアル特化型のSNSでは「Instagram」が急速に利用者数を伸ばし、主役の座に躍り出た。その後、Pinterestは話題に上がることが少なくなり、存在感は薄れていったかのように思えた。だが、実際はサービスモデルを変えながら、地道に利用者を獲得していった。
現在のPinterestをSNSと区分するのは誤りだ。どちらかといえば、画像・動画に特化した検索サービスに近い。例えば、「8畳 インテリア」といった検索キーワードで、自宅と間取りが近い部屋の写真を探して、インテリア購入の参考にするといった具合に使われるようになっている。直感的に参考になる情報を探せるほか、見つけた写真の中から欲しい商品だけにフォーカスして、類似商品を次々に探せるといった機能はPinterestならではだ。
21年に国内の利用者数は870万人(ニールセン デジタル調べ)を超え、一定規模に拡大したタイミングで国内初のテレビCMの放送に踏み切るなど、日本市場での利用者拡大のアクセルを踏んだ。「インスタ映え」や「TikTok売れ」といった、新たな消費のトレンドが生まれる中、「Pinterest検索」という新たな消費行動を生み出し始めている。検索サービスの“伏兵”が22年前半に、ついに広告事業の本格化に乗り出す。
Pinterestの使われ方の変化や広告事業の展望、成果を出すための活用法について、21年10月にピンタレスト・ジャパンのカントリーマネージャーに就任した成田氏が明かす。
ピンタレスト・ジャパン カントリーマネージャー
――Pinterestが日本展開を始めて8年がたった。なぜこのタイミングでテレビCMの放送などの利用者拡大策に踏み切ったのか。
Pinterestは投稿型のソーシャルコンテンツを扱っているため、SNSに分類されがちだ。だが、当社ではPinterestを生活に役立つアイデアを画像や動画で発見できる「ビジュアル探索ツール」と位置付けている。個人のつながりを中心としたSNSとは、利用目的が異なる。特に人気のカテゴリーは「フード」「インテリア」「ファッション」「ビューティー」だ。そうしたカテゴリーにおいて、ホームオフィスのつくり方、時短レシピ、化粧のハウツーなど実用的なアイデアを求めて、Pinterestで検索されている。
機能でいえば機械学習とコンピュータービジョンに強みがある。コンピュータービジョンを活用した機能が「Pinterest レンズ(※)」。好きな写真から類似した画像を探せる機能で、自分の欲しい商品や生活のヒントになる情報を探しながら、次々とアイデアを広げていくことができる。
利用者数を増やすだけではなく、Pinterestでの検索用途に合ったコンテンツを増やすことが重要だ。利用者が投稿したコンテンツもあれば、企業を中心とするビジネスユーザーが投稿しているコンテンツもある。また、クリエーターと関係性をつくり、Pinterestへのコンテンツの投稿を後押ししてきた。コンテンツの数がそろわないと利用者数も増えないため、広告ビジネスを展開するボリュームも確保できない。だから 日本の利用者に関連性の高いコンテンツの拡充や、企業のビジネスアカウントのサポートなどに力を入れてきた。
男性利用者が1.5倍に、Z世代も利用加速
そうして、コンテンツの量がそろい、利用が拡大する中で、ようやく一定規模の利用者が獲得できた。さらにもう一段階、利用者を増やすべく、テレビCMの放送に踏み切った。Pinterestを使っているのは女性が中心だったが、20年から21年にかけて、男性の利用者が50%増加した。また、Z世代と呼ばれる若年層の検索数が2倍に増加するなど、利用者の幅も広がっている。
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