「服 臭い」「鼻毛 処理」「iPhone テレビ見る」「エアコン 効きが悪い」など、ちょっと知りたい生活上の知恵をキーワード検索すると、その解決策が上位に表示されるサイトがある。パナソニックが運営するお困りごと解決メディア「UP LIFE」がそれだ。開設2年で約350本の記事を公開。アクセス20倍と急成長中だ。その狙いに迫る。

パナソニックが運営するお困りごと解決メディア「UP LIFE」
パナソニックが運営するお困りごと解決メディア「UP LIFE」

 「洗濯したばかりの服がなぜか臭う」「頻繁にクリーニングに出せない制服の臭いが気になる」――。そんなとき、あなたはどうするだろう? 手持ちのスマホから「服 臭い」といった検索ワードで解決策を調べてみるのが一つの手だ。

 実際に検索してみよう。「服 臭い」の検索結果ページでトップに表示されるのが「洗っても服が臭い原因とニオイを消す方法!すぐに洗えない服の対策も」という記事。「皮脂や汗に含まれるタンパク質などの汚れが衣類に蓄積されると雑菌が増えて臭くなる」といった原因の説明から、「高温多湿の洗濯機の中に汚れた衣類をためておかずにすぐ洗ってすぐに干す」「風呂の残り湯は『洗い』に使って『すすぎ』には使わない」「温水で洗濯する」といった洗濯時のひと工夫について解説。クリーニングに頻繁に出せない制服についても、「入浴後の浴室に干す」「消臭スプレーをかける」といった方法を紹介している。記事1本5000文字ほどのボリュームある内容だ。

 これはパナソニックが運営するオウンドメディア「UP LIFE」の記事。UP LIFEを運営する同社コンシューマーマーケティングジャパン本部エンゲージメントセンター オウンドメディア推進部 クラブパナソニック企画課の石井智大氏は、「一言で言い表すと『お困りごと解決型オウンドメディア』。食、健康、働き方・休み方、家族やペットとの絆まで、一人ひとりの人生に寄り添いながら、すぐに役立つ暮らしの情報、サービスを発信していく」とメディアコンセプトについて説明する。

 2018年に同社が創業100周年を迎えた際、前社長の津賀一宏氏(現会長)が、新ビジョンとして「くらしアップデート業」を掲げた。長らく家電メーカーと位置付けてきた自社の立ち位置から、より良い暮らし・より暮らしやすい社会を築くことを自社の存在意義と定義し直し、個々人が求めるものに最適化していくことを意味している。

 そこから構想し、暮らしに寄り添うブランディングの発信メディアとして19年9月に開設したのがこのUP LIFEだ。現在、「家事・くらし」「食・レシピ」「ペット」「防災」「空気」「子育て」「美容」「健康」「エンタメ」「防犯」「旅行」「睡眠」の12カテゴリーで、毎日の生活に役立つライフハック系、生活の知恵、Tips的な内容を記事として発信している。

 これまでパナソニックは、“お役立ち記事”的なものを発信してこなかったわけではない。ただ今までは「商品を買っていただくためのコミュニケーション、興味関心や購入意欲を喚起する情報発信に重きを置いていた」(石井氏)。例えば洗濯についてであれば、ドラム式洗濯機と縦型洗濯機の違いやメリット・デメリット、洗濯機および乾燥機の設置スペースについて、おうちクリーニングコースで何が洗えるか? など、洗濯機の購入に前のめりなユーザーに向けた内容で、洗濯機の製品紹介ページ傘下のコンテンツとして記事公開していた。洗濯機カテゴリーに置く記事だけに、まず製品ありきで機能をアピールする内容になりがちだ。

 その点、UP LIFEは購入直前層に限らない広範なユーザーが直面しがちな“あるある”課題に寄り添う内容が中心。洗濯の話題であれば、前述の服の臭いを落とす洗い方から、洗濯表示の意味・見方、洗濯槽や糸くずフィルターのお手入れ方法といったノウハウ系の記事が並ぶ。

 以下は、21年8月、9月に閲覧回数が多かった記事のランキングだ。

友人にも聞きづらいお悩みごとがランクイン

「UP LIFE」21年8月に読まれた記事トップ10
「UP LIFE」21年8月に読まれた記事トップ10
「UP LIFE」21年9月に読まれた記事トップ10
「UP LIFE」21年9月に読まれた記事トップ10

「鼻毛の正しい処理方法」「VIOゾーンのムダ毛事情と正しいVIO処理」といった、季節性を感じる記事タイトルが上位に並ぶ。「夏場はいわゆるデリケートゾーンの毛の処理系の記事がよく読まれた。友人でも気軽には聞きづらい内容は検索されやすく、記事ネタとして強化していきたいポイントでもある」(石井氏)

 美容家電「パナソニック ビューティ」シリーズとして脱毛器やVIO専用シェーバーをリリースしているパナソニック発の情報であることも、ユーザーにとっては安心感になっているだろう。記事内容によっては専門家に監修や寄稿を依頼することで信頼性を高めている。

 従来の購入喚起記事と違って、UP LIFEではあくまで多くのユーザーが抱えている課題をタイトルに立ててその解決策を記事化しているが、記事の後半では、さりげなく商品紹介も交えながら説明している。あからさまな宣伝調ではなく、対策やノウハウを学びながら関連アイテムの存在を認知してもらい、必要が生じた際に想起されて購入につながることを期待するスタンスだ。記事末尾に製品ページへのリンクを置き、その遷移数をKPI(重要業績評価指標)として反響を確認している。

 記事閲覧を増やす工夫としては、大きく3つ。1つは同社会員サイト「CLUB Panasonic(クラブパナソニック)」との連携。クラブパナソニック上でさまざまなキャンペーンやイベント情報と共に、「くらしの記事」としてUP LIFE発の記事を掲載している。

 会員の登録情報に合わせて記事を出し分けているため、例えば「エオリア」などパナソニック製のエアコンを購入してクラブパナソニックに登録していると、「冷房と除湿(ドライ)ってどっちがお得?」「エアコンの効きが悪い? そう思ったときはココをチェック」といった記事が表示されやすい。登録製品情報の他、記事閲覧履歴、性・年代などの属性情報も踏まえて、ユーザー個別に興味を持たれやすい記事を“パーソナル配信”している。こうした購入後のデジタル接客で、次回もパナソニック製品を購入検討の俎上(そじょう)に載せてもらえるようにする狙いがある。

 2つ目は他社メディアとの連携。ニュースアプリ「SmartNews」やNTTドコモが運営するママ向けメディア「ママテナ」にUP LIFEのコンテンツを提供。その関連記事リンクからUP LIFEへの流入強化を図っている。

 3つ目は、SEO(検索エンジン最適化)対策。冒頭の「服 臭い」の他、「iPhone テレビ見る」「オーブン グリル 違い」「カレー 冷蔵庫保存」「エアコン 効きが悪い」など多くのワードでUP LIFEの記事がGoogle検索の1位に表示されている。

 自社が持つ商品群の利用にまつわる悩みや知っておきたい知恵など、ニーズを洗い出す記事ネタリサーチを行い、ユーザーが検索に使うキーワードを意識しながら記事化。検索順位や閲覧数が伸び悩んでいるときにはより適切なキーワードに変更したり追記したりと、随時チューニングをかけている。

 こうした取り組みで、公開記事本数は約350本(21年8月末時点)。月11~14本ペースで更新している。パナソニックの個人向けサイトでは、洗濯機・衣類乾燥機が「panasonic.jp/wash/」、エアコンが「panasonic.jp/aircon/」という具合に、「panasonic.jp」直下のディレクトリが商品カテゴリー別に約100個あるが、UP LIFEのディレクトリである「panasonic.jp/life/」は100サイト中、アクセス数トップ。開設2年でアクセス数は20倍に伸びた。「UP LIFEにアクセス!」といった大々的な宣伝をしていない知られざるサイトとしては大きな成果だ。

 記事制作に当たって撮影した写真などは、電車内で放映するトレインチャンネルの素材として活用し、YouTubeでも公開。コンテンツのマルチユースを進めている。今後も販促記事とは一線を画した“くらしアップデート”記事の立ち位置を守りつつ、購入あるいはサブスクリプション契約にも貢献する度合いを高めていきたい考えだ。

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