創業60年を超える老舗製麺店の丸山製麺(東京・大田)。コロナ禍で倒産危機に陥る中、新規事業としてスタートした冷凍自動販売機によるラーメン販売サービス「ヌードルツアーズ」が急成長を遂げている。仕掛け人である同社3代目の丸山晃司氏に、新規事業立ち上げの苦労と成功の秘密、今後の展望を聞いた。
緊急事態宣言で売り上げが8割減に――。東京都大田区で業務用麺類の製造を行う丸山製麺は、コロナ禍の2020年5月の緊急事態宣言で存続の危機に陥った。
1958年に創業し、ラーメンやうどん、そばなど、多種多様な麺を製造。BtoB業界で着実に売り上げを重ね、19年には過去最高の売り上げを記録する中、訪れたのが今回のコロナ禍だった。当時、従業員は35人ほどで、ほとんどが正社員。給与などの固定費が変わらないまま売り上げだけが減り、新たな融資や借り入れを受けない限り、4カ月ほどで倒産する可能性があるという窮地に追い込まれた。
そこで新たな収益源探しに挑むことになった。その役目を担ったのが、同社の3代目で取締役の丸山晃司氏だ。
IT系企業に勤めていた丸山氏は、18年1月に30歳で家業である丸山製麺に戻ってきていた。その当時から、新規事業にチャレンジすべく、社内での提案を重ねた。だが、「BtoBで堅調に業績を伸ばしており、あえてリスクの高いBtoC事業に参入する必要があるのかと、社長である父はなかなか首を縦に振らなかった」(丸山氏)。その後、新規事業がなかなか進められない中で直面したのが、コロナ禍による倒産危機。新たな収益確保は急務となり、「半ば勝手にやる形で新規事業の開発を強行した」(丸山氏)。
EC展開で見えた新たな可能性と限界
「コロナ禍で外食の形が確実に変わる」。丸山氏はそう感じたという。そこで始めたのが、ネット通販による販売だ。
実はコロナ禍前、知人に麺を売ってほしいといわれていたこともあり、19年9月頃にはヘイ(東京・渋谷)のECプラットフォームである「STORES」を活用して、小規模ながら通販を行っていた。当初は、単純に冷蔵の麺を販売していただけで、販売金額は月に数千円程度。到底ビジネスになるものではなかった。
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