2021年、「NFT(非代替性トークン)」という言葉が瞬く間に世界中に広がった。ジャパン・コンテンツ・ブロックチェーン・イニシアティブ(JCBI)の代表理事で、長年ブロックチェーンの活用や研究に取り組んできた伊藤佑介氏は、「NFTは一言で言うと、ブロックチェーンで守られたデジタルコンテンツ」と説明する。バズワードとなっているNFTについて、その誤解やリスク、イノベーションの本質について語ってもらった。

伊藤佑介氏
JCBI代表理事の伊藤佑介氏
伊藤 佑介(いとう ゆうすけ)氏
一般社団法人ジャパン・コンテンツ・ブロックチェーン・イニシアティブ(JCBI) 代表理事
東京工業大学理学部情報科学科卒業後、システムインテグレーション企業を経て、2008年博報堂に入社。16年からメディア、コンテンツ領域のブロックチェーン活用の研究に取り組む。20年よりJCBIにて現職

 NFTはブロックチェーンで守られたデジタルコンテンツである。ただ、そのコンテンツが高値で販売でき、それがイノベーションの本質だと考えていないだろうか。もしそうであれば、大きな誤解だ。

 NFTの話をする前に、まずブロックチェーンについて語っておきたい。ブロックチェーンの始まりは、誰もが知っている「ビットコイン」だ。2008年、謎に包まれたsatoshi nakamotoなる人物が、Cryptography Mailing Listというメーリングリストへ送付した、たった9ページの論文からすべてが始まる。簡単に内容に触れると、この論文の前段は信用のおける第三者機関を介さずとも利用者同士でオンライン取引が成立するデジタル通貨「ビットコイン」の構想が、そして後段にはそれを実現する技術的な手法が記されている。この論文の中に「ブロックチェーン」という言葉は出てこないが、この技術的な手法に対し、ビットコインのような暗号資産(仮想通貨)以外の非金融領域での活用の可能性が見いだされ、ブロックがチェーンで結ばれているようなデータ構造になっていることから、「ブロックチェーン」と呼ばれるようになった。

たった9ぺージの論文が、ブロックチェーンの始まり
たった9ぺージの論文が、ブロックチェーンの始まり

 では、ブロックチェーン技術とは何かと言えば、「データを絶対に改ざんできないシステムを作る技術」であり、それ以上でもそれ以下でもない。そして、この技術の1番目の社会実装として、金融領域で有用に活用され、通貨取引データが絶対に改ざんできないシステムとして生まれたのがビットコインである。絶対に改ざんされないから人々はそのデータを信頼し、売買取引することに不安を感じないというわけだ。

 技術はどんな有益な用途で利用できるかによって社会に価値を生み出すが、ブロックチェーン技術は何に利用できる技術なのだろうか。それは「社会に存在する大切な情報を守る」という一点に尽きる。大切な情報の一つであるお金の情報をブロックチェーンによって守ったことによって生まれたのが、ビットコインをはじめとした仮想通貨だ。

お金以外の情報にブロックチェーンを活用できるのか?

 社会にはお金以外にもたくさんの大切な情報がある。例えば、土地の登記、医療の診断書、コンテンツの権利などなど。こんな話をすると、時々こんなことを言われることがある。「そうは言っても、ブロックチェーンが活用されたケースは暗号資産以外に見たことがないですよ」。だが、そうではない。経済産業省のリポートにもある通り、お金以外の情報にブロックチェーンを活用しようと、多岐の領域にわたって企業の取り組みが行われている。

経済産業省商務情報政策局情報経済課「平成27年度 我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査)報告書概要資料」(平成28年4月28日)より
経済産業省商務情報政策局情報経済課「平成27年度 我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査)報告書概要資料」(平成28年4月28日)より

 つまり、「“データを絶対に改ざんできないシステムが作れる技術=ブロックチェーン”でどんな大切な情報を守れば、どういった新ビジネスが生まれるのか」という検討が、もう何年も前からさまざまな領域で行われてきていたのだ。そして、それらの苦難のチャレンジの繰り返しの結果、ついに仮想通貨に次ぐ、2番目の社会実装として息吹が芽生えたのが、まさに今年、21年なのである。

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