ヤフーのプレミアムモール「PayPayモール」が成長を遂げている。PayPayの大型還元キャンペーンに目が向きがちだが、実はその陰で2019年にヤフーを有するZホールディングス(ZHD)の傘下入りをしたZOZOとのシナジーが好影響を生んでいる。地道なサイト改善、知見の共有……。シナジーを生む現場の取り組みに迫った。

19年10月に始まったPayPayモール。19年12月にはZOZOが出店して話題に。ZOZOのECノウハウを融合することで、モール自体のサービス拡充が加速している
19年10月に始まったPayPayモール。19年12月にはZOZOが出店して話題に。ZOZOのECノウハウを融合することで、モール自体のサービス拡充が加速している
[画像のクリックで拡大表示]

 2021年3月期の連結業績で、売上高に当たる売上収益が前年比14.5%増の1兆2058億円と、2年連続で2桁増収を達成しているZホールディングス(ZHD)。20年はEC部門が大きく伸長し、同社のEC取扱高は3兆2265億円(前年比24.4%増)を突破する好調ぶりだ。中でも「Yahoo!ショッピング」や「PayPayモール」などのショッピング事業は、取扱高が前年比45.1%増と急拡大している。

 PayPayモールは、19年10月に本格スタートしたヤフーのオンラインショッピングモール。一定の条件をクリアした“優良店”のみ出店でき、Yahoo!ショッピングのプレミアム版といった位置付けで、「楽天市場」や「Amazon」といったモール型ECとしては最後発といえる。短期間での急激な拡大の背景には、PayPay関連の強力なキャンペーンもさることながら、実は19年11月にZHD傘下に入ったZOZOとのシナジーが生まれていることがある。PayPayモールの、特にファッションカテゴリーはZOZOが運営する「ZOZOTOWN」のノウハウが組み込まれ、大きく成長を遂げている。

 ZOZOのグループ入りのシナジー効果としてよく語られるのが、ZOZOTOWNのPayPayモールへの出店だ。これによりPayPayモールのファッションカテゴリーが一気に充実した。ZOZOは既存のZOZOTOWN(以下、本店)に加え、「ZOZOTOWN PayPayモール店」(以後、PayPayモール店)という2店舗体制となった。一見すると、互いに顧客を“食い合う”可能性があるが、本店とPayPayモール店は客層が異なっているという。「PayPayモールは、ZOZO本店に比べて利用者の年齢層が比較的高く、30代、40代の女性が中心。ZOZOのことは知っているものの、若者向けと感じて積極的に使っていなかった人もPayPayモールでは取り込めている」と、ヤフーのショッピング統括本部 マーケティング1本部 新客・育成企画部長 兼 ZOZO推進室長の鈴木哲之氏は話す。客層の差異化ができており、相互の送客にもつながっている。

 ZOZOにとってもPayPayモール出店の効果は既に出ている。大型キャンペーン時には、PayPayモール店の単日売り上げがZOZO本店をしのぐ事態が起きたほどだ。

ZOZO譲りのブランド検索機能でCTRアップ?

 相互送客やキャンペーンといった大きなシナジー効果が目立つヤフーとZOZO。だが、実は一方で極めて地道な取り組みも奏功している。ZOZOのEC運営ノウハウをPayPayモールに着実に反映しながら、改良を重ねているのだ。

このコンテンツ・機能は有料会員限定です。