コロナ禍でリアルでのライブを中心としていた既存のエンターテインメントが中止や延期を強いられる中、注目されるようになったのがオンラインライブだ。大物アーティストも続々と有料オンラインライブを開催するようになり、マーケットは急成長。海外も含めた遠隔地のファンとつながれるといったオンラインならではの特徴も浸透し、リアルでのライブとは別のものという認識が広まってきた。この流れはwithコロナ時代にも続きそうだ。いち早くオンラインライブの電子チケット販売を手掛け、配信システムも提供しているZAIKO(ザイコ、東京・港)に、オンラインライブを取り巻く状況の変化と取り組みを聞いた。
ZAIKOは2019年1月にスタートした会社で、当初はリアルイベントの電子チケット販売システム提供をメインの事業としていた。それがコロナ禍で一転。ライブやイベントが次々中止になる中、20年3月からは「ライブ配信」機能を搭載し、オンラインライブの電子チケットを販売できるようにした。20年6月には動画配信サービス「ZAIKO LIVE」をスタート。オンラインライブのチケット販売から配信までをトータルで提供するプラットフォームとなった。現在は毎月約700本の有料配信ライブを手掛けている。20年3月から累計のライブ実施本数は1万本を超えた。
ZAIKOが強みとしているのは、多言語対応と多通貨決済機能だ。多くのチケット販売サービスは日本語の対応のみで、海外からのユーザーには使いづらい。ZAIKOは立ち上げ当初より、多言語対応と多通貨決済を重視しているので、海外からのユーザーにとって使いやすい。
技術的な強みもあった。「他のチケット販売サービスは資本に大手コンビニチェーンが絡んでおり、リアルイベントの紙チケットをコンビニで販売していることが多い。そのため電子チケットのシステム整備が遅れ気味で、そこにZAIKOが参入する余地があった」と同社の創業メンバーでもあるローレン・ローズ・コーカーCOO(最高執行責任者)は話す。
さらに、自由度が高い販売ページの設計や、 訪れたユーザーの情報が分かる「D2F」(Direct to Fan)の仕組みも特徴だ。大手チケット販売サービスが、どのアーティストでも共通のデザインを採用しているのに対し、「ZAIKOが提供しているのはいわゆるホワイトレーベル型のプラットフォームで、アーティストやイベント主催者は自身のブランディングに合わせて、独自の販売ページを作ることができる。そこを訪れたユーザーのプロフィルや、どこから来たのか、コンバージョンやCPA(顧客獲得単価)といった情報もアーティスト側に提供している。他のチケット販売サービスに比べ、提供できる情報が多い」とコーカーCOOは胸を張る。
料金設定は透明性が高い。「ZAIKOの利用料金は、東京ドームでライブを開催できるクラスのアーティストから、小さいライブハウスを拠点とするインディーズのアーティストまでみな同じ」(コーカーCOO)。そのため、中堅アーティストや、インディーズのアーティストから利用が広がっていったそうだ。
また、そうしたアーティストの多くは自分たちでSNSを通じてキャンペーンを行っていたり、ECでのグッズ販売を行っていたりと、様々なデジタルマーケティングに取り組んでいる。前述のように、ユーザーの情報をアーティストに提供するZAIKOの仕組みは、「そうしたデジタルマーケティングに活用できるデータがほしいというニーズにもフィットした」とコーカーCOOは話す。
そうしたアーティストは、オンラインライブに適応するのも早かった。ZAIKOとしても、コロナ禍でリアルイベント向けの電子チケット販売サービスは窮地に陥ったが、いち早く配信機能を実装して提供することで事業を立て直した。
オンラインライブの運営に踏み切ったことで事業モデルも変化。電子チケット販売では競合だった企業も、今はパートナーになりつつある。「例えば、大手チケット販売サービスであるローソンチケットは、現在は大切なビジネスパートナー。その配信ライブの多くでZAIKOのプラットフォームを利用している」(コーカーCOO)。KADOKAWA、ポニーキャニオン(東京・港)、ゲーム会社などのオンラインイベント配信にも同社のプラットフォームが利用されている。
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