スポーツウエア大手のデサントが2021年8月に立ち上げた「DESCENTE CONNECT(デサント・コネクト)」は、3つのユニットに分離するウエアを特徴とする新ブランドだ。同社では、コロナ禍で「人とのつながり」が希薄になるなか、新しい衣服の在り方を提案するブランドと位置付けている。

デサントが立ち上げた新ブランド「DESCENTE CONNECT」のウエアは、3つのユニットで構成されている
デサントが立ち上げた新ブランド「DESCENTE CONNECT」のウエアはユニット構造が特徴。アパレル業界に革命を起こせるか

ユニットの組み合わせで多彩な着こなしを訴求

 「DESCENTE CONNECT」は「センター(襟から前身ごろにかけての部分)」「ショルダー(両肩から袖の上半分にかけての部分)」「ランバー(後ろ身ごろから胴体にかけての部分)」の3つのユニットで構成されるウエア。各部はファスナーで接合されており、簡単に着脱できる。

 なぜ、このような変わったウエアを考案したのか。DESCENTE CONNECTのデザインディレクター・近藤敏雄氏によれば「開発を始めたのは1年半ほど前。コロナ禍で人と会うことが難しくなったなか、ウエアメーカーとして『着る』以外の価値、『人とのつながり』をウエアで提供したいと考えた」とのこと。例えば、色違いのDESCENTE CONNECTを持っている友達とユニットを交換する、外出中に子どもが寒そうにしていたらセンターユニットを取り外して着せてあげるというイメージだ。「ユニットを交換する楽しみ、ワクワク感を付加価値とした」(近藤氏)

センターユニット
センターユニット
ショルダーユニット(上)、ランバーユニット(下)
ショルダーユニット(上)、ランバーユニット(下)

 アパレル業界には、大量生産した商品が売れ残り、次のシーズン前に多くの廃棄が発生するという長年の課題がある。DESCENTE CONNECTの仕組みを利用して消費者が必要なユニットごとに購入するようになれば、メーカーはその需要を読み取り、廃棄を減らせる可能性がある。DESCENTE CONNECTは環境問題にも配慮したウエアとなり得る。

 各ユニットの形状は共通しているので、同サイズのウエアならユニット同士を交換することができる。例えば、DESCENTE CONNECTのダウンジャケットとライトジャケットを持っているという場合、それぞれのユニットを入れ替えることで8通りの組み合わせが可能だ。「通気性や保温性、防水性といった機能も変化するので、スキーにも登山にもジョギングにもと、利用シーンに応じた着回しが可能になる」とデサント R&Dユニット 機能・企画開発部 製品開発課の江口ちひろ課長は話す。

 従来のウエアは完成品を販売するものだったが、DESCENTE CONNECTではウエアの完成形を消費者が決めてユニットを購入することを目指している。DESCENTE CONNECTは、アパレルにおける消費スタイルの転換を提案するウエアでもあるのだ。

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