Vlog(ビデオブログ)撮影に特化したニッチなデジタルカメラがブレークしている。ソニーの一眼カメラブランド「α」を冠する、「VLOGCAM ZV-E10」だ。既存のα系とは操作性が異なり、独自機能もてんこ盛り。一眼カメラとして極めて異質なモデルといえる。なぜこんな“異端児”が生まれたのか、開発の経緯をたどると“カメラで写真を撮らない”若手社員が常識を打ち破る奮闘が見えてきた。

日常を動画で収め、ブログのように公開するVlog文化が急激に拡大中。ソニーの投入した“専用機”ブレークの陰には、入社4年目である吉原英里氏の定石破りのチャレンジがあった
日常を動画で収め、ブログのように公開するVlog文化が急激に拡大中。ソニーの投入した“専用機”ブレークの陰には、入社4年目である吉原英里氏の定石破りのチャレンジがあった

 「正直、ソニーに入社するまでカメラは友達に借りて使うくらいで、撮影はもっぱらスマホだった」。そう語るのは、ソニーでデジカメの商品企画を担当する入社4年目の吉原英里氏(商品企画部 、プロダクトプランナー)だ。

 そんなスマホ世代の吉原氏が企画した、斬新なデジカメがヒットをしている。そのカメラの名前は、「デジタル一眼カメラα VLOGCAM ZV-E10」。2021年7月30日に予約が開始されると注文が殺到。9月の発売後も好調を維持し、調査会社BCNによれば9月のデジカメ全体の販売台数、金額シェア共に1位を獲得する快進撃を遂げている。

ソニーが2021年9月に発売したAPS-Cセンサー搭載のミラーレス一眼カメラ「VLOGCAM ZV-E10」。レンズ交換式で、「デジタル一眼カメラα」のブランドを冠する。4K動画や高画質フォーマットに対応。高性能なマイクも内蔵する。実勢価格は7万8100円(税込み、ボディーのみ)
ソニーが2021年9月に発売したAPS-Cセンサー搭載のミラーレス一眼カメラ「VLOGCAM ZV-E10」。レンズ交換式で、「デジタル一眼カメラα」のブランドを冠する。4K動画や高画質フォーマットに対応。高性能なマイクも内蔵する。実勢価格は7万8100円(税込み、ボディーのみ)

 ZV-E10の最大の特徴は、VLOGCAMという名前を冠するように、Vlogの撮影に特化している点だ。Vlogとは、「Video Blog」を省略した造語で、文章ではなく「映像」によって日常の風景をつづることを指す。Vlogでは顔を出しつつ、食事をつくる様子やメーク中の様子、遊んでいるシーンや旅先でのワンシーン、さらにはお薦め商品のレビューなど、日常の出来事を投稿する。Vlogを撮影し、YouTubeといった動画共有サービスなどに投稿するユーザーはVloggerと呼ばれる。海外では2000年代から広がり始め、日本でも19年ごろから急速に浸透。TikTokなど、動画共有アプリの一般化もあり、ここ数年で投稿動画文化が一気に花開いた。

 ソニーは今回の新モデルであるレンズ交換式のZV-E10の前に、レンズ一体型の「ZV-1」を初代VLOGCAMとして20年6月に投入し、市場に本格参戦。好調な滑り出しを見せたことで、今回のZV-E10の発売につながった。

初代VLOGCAM「ZV-1」。レンズ一体型としては久々のヒットに
初代VLOGCAM「ZV-1」。レンズ一体型としては久々のヒットに

入社2年目の若手に期待した“変革”

 ZV-E10のヒットへの大きな足掛かりとなったのは、前述の初代VLOGCAM、ZV-1の開発だ。まずは、その経緯を見ていく。

 今回の主役である吉原氏は、“初代”のZV-1の開発にも参画していた。ソニーは以前からVlog市場に目を付けており、小型の高性能デジカメ「RX100VII」などをVlog撮影向けとして販促を掛けたこともある。だが、Vlogを日常的に撮影するVloggerなどからは、より特化した機能やモデルを求める声もあり、Vlog専用モデルの開発へとかじを切ることとなった。そんなとき、白羽の矢が立ったのが、当時入社2年目の吉原氏だった。

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