マンダムのEC専用スキンケアブランド「エムフォー」は、少女漫画『ときめきトゥナイト』やANAのCA(客室乗務員)とのコラボが奏功し、発売から2年で定期購入の会員数が約6倍に。研究成果が売りであるにもかかわらず、共感に訴える戦略を取った。
細胞にある感覚センサー研究を製品に活用
エムフォーはマンダムが研究に力を入れている「TRP(トリップ)チャネル」の知見を取り入れたスキンケアブランドだ。TRPチャネルとは細胞にある温度感覚や痛み・かゆみなどの不快感の元となる化学刺激の受容体のこと。同社ではTRPチャネルを刺激する成分を解明し、製品の改良・開発に用いてきた。
マンダムによると、五感以外の感覚センサーとしてTRPチャネルが温度を感じるセンサーであることが判明したのは1997年。同社は2005年からTRPチャネル研究の第一人者で自然科学研究機構・生命創生探究センターの富永真琴教授と、最近では東京大学医科学研究所・石井健教授とも共同でTRPチャネル研究に取り組んでいる。
マンダムが製品の改良や開発においてTRPチャネル研究の成果を最初に取り入れたのはヘアカラー剤で、薬剤の刺激で痛みを感じる課題解決のためだった。具体的には「しみて痛い」という不快刺激を受容するTRPチャネルとしてTRPA1を特定し、カラー剤に含まれるアルカリによって痛みが発生していること、炭酸イオンを加えることで痛みを抑えられることが明らかになった。
また、ボディペーパー市場をけん引する同社は、ボディペーパーにより快適な清涼感を持たせるためにこの研究を用いた。清涼感を与える成分といえばメントールで、冷たさや清涼感の刺激を受容するTRPチャネル「TRPM8」は確かにメントールに反応する。しかし、単純に含有量を増やすだけでは刺激過多となり、「冷たくて痛い」と感じるTRPA1を刺激。痛みを併発させてしまう。
そこで、TRPM8、TRPA1を基準に冷たさと不快刺激の度合いを測る評価方法を開発し、ユーカリ由来のユーカリプトールと有機化合物のイソボルニルオキシエタノールがメントールの刺激を低減することを突き止めた。強い清涼感にもかかわらず痛みを感じないボディペーパーは、TRPチャネル研究の成果だ。
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