岩下食品(栃木市)は、主力商品である生姜(しょうが)の酢漬け「岩下の新生姜」のパッケージデザインを2021年9月8日からリニューアルした。山本食品工業(埼玉県行田市)が販売している「フレッシュ新生姜」のデザインと類似しているとの声が消費者から寄せられ、売り場で混同するケースも出てきたからだ。弁護士を通じて改善を求めたが解決に至らず、仕方なく変更したという。

左から岩下食品「岩下の新生姜」の旧デザイン、山本食品工業「フレッシュ新生姜」、岩下食品「岩下の新生姜」の新デザイン
左から岩下食品「岩下の新生姜」の旧デザイン、山本食品工業「フレッシュ新生姜」、岩下食品「岩下の新生姜」の新デザイン

 パッケージは1987年の発売以来、巾着袋のように上部を縛るデザインを30年以上にわたって継続してきたが、平らな袋に変更。プラスチックの留め具がなくなり、年間約1トンのプラスチック使用量の削減につながるという。「岩下の新生姜」のロゴは約10%大きくし、視認性のアップを図った。さらに同社が運営する「岩下の新生姜ミュージアム」内にある「ジンジャー神社」の公式キャラクターでもある「イワシカちゃん」を前面にあしらった。

 「山本食品工業が以前から当社と似たデザインの商品を『フレッシュ新生姜』として販売しており、間違って購入したお客さまから苦情が多数寄せられていた。デザインの変更を求めたが、聞く耳を持たない。であればお客さまを守るため、当社がデザインを変更することを決断した」と、岩下食品社長の岩下和了氏はリニューアルの背景を語る。

類似品対策としてパッケージ変更をアピールする岩下食品のサイト。(岩下食品のサイトより)
類似品対策としてパッケージ変更をアピールする岩下食品のサイト。(岩下食品のサイトより)

 岩下社長はSNSで情報発信を続けるだけでなく、寄せられる消費者の声にも耳を傾けているが、数年前より「間違えて購入してしまった」「紛らわしい」「小売店で交換してもらった」といった声が届くようになっていたという。スーパーなどの小売店にも苦情が持ち込まれていると、営業からも報告があった。消費者にフレッシュ新生姜を見せ、似ているかどうかを独自に調査した結果、半分以上が岩下の新生姜と混同していたという。

 フレッシュ新生姜のデザインを見ると、岩下の新生姜と同じ赤で商品名が記載され、巾着型だ。透明な袋のため、生姜のピンク色が目に入る点も同じ。だが異なる部分もあるため、似ているかどうかの判断は消費者ごとに異なるかもしれない。

 そこで実際に消費者はどう思っているかを、フレッシュ新生姜を扱うスーパーで同商品を購入していた人に直接聞いてみた。すると岩下の新生姜と思って今までフレッシュ新生姜を手に取っていたという。ただしデザインを混同しているというより、新生姜といえば岩下の商品という宣伝のイメージが強いため間違えていたようだ。

山本食品工業の山本会長は「まねではない」と主張

 岩下食品が山本食品工業に最初の通知書を送付したのは2019年11月。「(岩下の新生姜の)パッケージデザインと複数の点で同一であり(略)商品名称及びパッケージデザインの使用停止を求める」と警告した。山本食品工業からは同月中に「模倣はしておらず、お客さまが混同することがないことが明らか」との回答書が返ってきた。やり取りは20年10月まで計5往復行われた。この経過は当時、一部メディアでも話題になったほど。その後も状況は進展せず、結局はリニューアルを選択した。

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