飲食店向けのITサービスを手掛けるトレタ(東京・品川)と外食大手のダイヤモンドダイニングは、デジタル活用を前提とした新業態店「焼鳥IPPON(ヤキトリイッポン)」を開発、2021年9月1日にオープンした。デジタルネーティブな焼鳥店で実現する飲食業界アップデートに向けた3つの秘策とは?
「焼鳥IPPON(ヤキトリイッポン)」はIT企業のトレタと外食企業のダイヤモンドダイニングがタッグを組み、ゼロベースで開発した異例づくしの飲食店だ。キャッシュレス化はもとより、顧客一人ひとりの要望に応えるパーソナライズ化、そして需要に応じて価格変動を行うダイナミックプライシングまで試行する、いわば飲食DX(デジタルトランスフォーメーション)の“ショーケース”である。
DXのベースとなるのは、トレタが開発した店内モバイルオーダーシステム「トレタO/X(オーエックス)」。来店客は店員から提示されたQRコードをスマートフォンで読み取り、Webサイト上のデジタルメニューから注文、会計はクレジットカードで行う仕組みだ。トレタは21年7月に本格展開を始め、すでにワンダーテーブルが運営する「よなよなビアワークス」や、エー・ピーホールディングス「塚田農場」の一部店舗で採用されている。
これらの既存店舗では、動画を使ってシズル感を演出し、ファンが多い店長を前面に押し出すなどしたデジタルメニューを作り込み、チェーンごとの特色を生かした店内モバイルオーダー機能に特化している。それに対し、新業態として一から開発された焼鳥IPPONではトレタO/Xの機能を“フルセット”で活用している。
「1970年ごろから発達してきた外食産業は約50年間もアナログ一辺倒の世界で、固定観念に縛られてきた。焼鳥IPPONはその先入観をデジタルの力ですべて突き崩し、最適な現場オペレーションや顧客体験を再構築している。人力の限界を突破する店だ」と、トレタ社長の中村仁氏は強調する。
では、焼鳥IPPONが示す飲食DXの理想型とはどんなものなのか。そこには、デジタルネーティブの新業態店舗ならではの3つの秘策があった。
自分好みの“わがまま注文”が可能に
案内されたテーブルにつくと、そこには通常あるはずのメニュー表はない。フレンドリーな店員に渡されるのは、QRコードが記載された1枚のシートだけだ。それを自分のスマホで読み取り、Webサイトへ飛ぶと、動画を交えたリッチなデジタルメニューが表示される――。
焼鳥IPPONで味わう新体験の幕開けだ。実は、グループで訪れても同じくQRコードが渡され、それを各自が読み取り、それぞれのデジタルメニューから注文する仕組み。つまり、完全個人注文の店なのだ。必然的に支払いも個人会計となり、Webサイトを通じてそれぞれがキャッシュレス決済することになる。
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