2021年6月に社長が交代し、楠見雄規氏が社長執行役員CEO(最高経営責任者)に就任したパナソニック。デザイン本部長の臼井重雄氏は同年4月、100年を超える歴史を持つ同社初となるデザイナー出身の執行役員に就いた。10月のグループ体制の変更を前に、今後のパナソニックのデザインについて臼井氏に聞いた。

臼井重雄氏「『人間中心・未来思考』をデザイナー主体のチームで主導していく」
「『人間中心・未来思考』をデザイナー主体のチームで主導していく」と話す臼井氏(写真提供/パナソニック)
臼井 重雄(うすい しげお)氏
パナソニック執行役員 デザイン担当
1990年松下電器産業入社。テレビ、洗濯機などのプロダクトデザインを手掛ける。2007年中国・上海に赴任しデザインセンター中国拠点長。17年パナソニック アプライアンス社のデザインセンター所長。19年デザイン本部長。21年より現職

――10月の組織体制の変更とは?

臼井重雄氏(以下、臼井) 21年10月1日からグループ体制が変わります。「くらし」領域で、家電を含むアプライアンス社などをまとめた、「くらし事業本部」を新設。同事業本部CEOには、アプライアンス社前社長の品田正弘が就きます。

――デザイン部門はどう変わる?

臼井 大きく2つの役割があります。1つは、デザイン本部はくらし事業本部の中に入ります。そのほか事業会社や社内分社などにもデザイナーが在籍しているので、デザイン本部が事業部のデザインを横串でコントロールします。もう1つは「コーポレート戦略・技術部門」で全社のデザインを担当します。私は会社全体のデザインの執行役員とデザイン本部長に加え、くらし事業本部のダイレクターカスタマーエクスペリエンス担当と、カスタマーエクスペリエンスチームのリーダーも兼務します。

2021年10月1日以降のパナソニックのグループ体制。デザイン担当の執行役員兼デザイン本部長の臼井重雄氏は、「くらし事業本部」のダイレクターカスタマーエクスペリエンス担当と、カスタマーエクスペリエンスチームのリーダーも兼務する
2021年10月1日以降のパナソニックのグループ体制。デザイン担当の執行役員兼デザイン本部長の臼井重雄氏は、「くらし事業本部」のダイレクターカスタマーエクスペリエンス担当と、カスタマーエクスペリエンスチームのリーダーも兼務する

顧客起点のBTCチームが誕生

――カスタマーエクスペリエンスチームとは?

臼井 くらし事業本部のデザイン本部内には、BTC(ビジネス、テクノロジー、クリエーション)チーム「FLUX(フラックス)」がありますが、カスタマーエクスペリエンスのチームは社長直下に配置され、くらし領域の経営により直結したBTCチームになります。FLUXは未来を起点にしていますが、カスタマーエクスペリエンスのチームは顧客体験が起点です。このチームは社内のキーパーソンが集まった専任集団で、30代前半から40代半ばまでの男女混成チーム。12人のうちデザインから4人が参画します。

――「コーポレート戦略・技術部門」でのデザインは?

臼井 デザインやクリエイティブで、経営を後押しします。その1つとして、「デザイン経営実践プロジェクト」を進めます。松下電器産業の頃からお客さま第一でやってきたことに立ち返って、顧客起点の価値創造を競争の原点と位置づけ、もう一度徹底しようという考えです。顧客起点の価値を掘り起こし、商品やサービスを通じてその価値を実現するために、事業部に対してデザイン経営の導入を本格化させます。

――具体的には?

臼井 既存事業の延長ではなく、長期構想から現在や短期、中期計画を立てていきます。50年先を見据えて、通過ポイントとして10年後を捉えるのでは、まったく違う計画になる。人の生活に寄り添いながら理想の未来を描いてバックキャストで考える「人間中心・未来思考」をデザイナー主体のチームで主導します。理想の未来像と各事業部の構想との合致点がどこにあるかを座学と実践を行ったり来たりしながら、考え続ける、問い続けることが大事だと思っています。

仕事が広がりチャンスも増える

――デザイナーの仕事領域は?

臼井 デザイン部内に閉じたものではなく、仕事相手は社内全領域に広がって、会社全体のクリエイティビティーを高めるフェーズに入っています。例えば、商品やサービスのタッチポイントは、ウェブサイトから店頭まで幅広くさまざま。従来は他部署が担当していましたが、一貫した世界観を構築するため、活動領域が広がりました。デザイナーの役割が広がり、活躍のチャンスも増えています。

――家電のプロダクトデザインは?

臼井 私は中国の拠点から日本に戻って約4年間、家電のあるべき姿をずっと問い続けてきました。それらの成果と言える商品群を21年9月に発売しました。それが、過剰な機能を引き算し、最初はシンプルな機能にして必要な機能をプラスできる「マイスペック」な調理家電シリーズです。先日発表したところ、すでに好評を得ています。

21年9月に発売したIoT対応の「マイスペック」調理家電シリーズのIHジャー炊飯器(左)とオーブンレンジ(右)。シンプルな機能で売り出し、ユーザーが必要に応じてグリル皿などのオプション品や機能を追加。機能はアプリ経由でアップデートする
21年9月に発売したIoT対応の「マイスペック」調理家電シリーズのIHジャー炊飯器(左)とオーブンレンジ(右)。シンプルな機能で売り出し、ユーザーが必要に応じてグリル皿などのオプション品や機能を追加。機能はアプリ経由でアップデートする
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