2021年9月5日に閉幕した東京パラリンピックで、ある2人の外国人選手は、日本発の技術で生まれたスポーツ用義足を身に付けていた。開発元のスタートアップ、Xiborg(サイボーグ、東京・江東)代表の遠藤謙氏は、パラスポーツを基点として「技術で固定概念を覆す面白いことを実現する」ことを目指す。

パラリンピックに出場した米国のジャリッド・ウォレス選手(右端)。Xiborgのスポーツ用義足を装着して出場した
パラリンピックに出場した米国のジャリッド・ウォレス選手(右端)。Xiborgのスポーツ用義足を装着して出場した

 ネコ科の動物が持つ足のように下腿(かたい)部が後ろにせり出した形状。選手の走りに合わせてそのブレード(板ばね)が僅かに曲がる。オリンピックスタジアムのトラックで競技用義足を身に着けたパラアスリートたちが躍動した。男子200メートル(T64)で銅メダルを獲得した米国のジャリッド・ウォレス選手、同じく女子200メートル(T64)で銅となったオランダのキンバリー・アルケマデ選手が装着していた黒い板ばねの義足は、日本のスタートアップXiborgが開発した「Xiborg ν(ニュー)」だ。

 「義足のメーカーはいろいろあるが、一緒になって開発してくれる機会を与えてくれるところはなかった」とウォレス選手は話す。Xiborgの義足を利用し始めた17年、世界パラ陸上競技選手権の200メートルでいきなり金メダルを獲得。「ケン(遠藤謙氏)の素晴らしいところは、そこで結果を出した後も改良を続け、ますます進化したものを届けてくれることだ」(ウォレス選手)と評価する。アルケマデ選手も「コロナ禍で(物理的な距離のある)日本の会社と義足の調整を進めるのは難しい面もあった。それでも、とても良い素晴らしいブレード」と話した。

オランダのキンバリー・アルケマデ選手(左から3人目)。(写真提供/OLYMPIC INFORMATION SERVICES)
オランダのキンバリー・アルケマデ選手(左から3人目)。(写真提供/OLYMPIC INFORMATION SERVICES)

 Xiborgは、米マサチューセッツ工科大学(MIT)で博士号を取得した遠藤氏が率いるスタートアップ。ソニーコンピュータサイエンス研究所で身体拡張に関する研究を手掛けながら、元陸上選手の為末大氏や、RDS(埼玉県寄居町)の杉原行里氏(関連記事:「58歳のおっちゃんと技術の融合 パラ出場支えた日の丸開発チーム」)と意気投合し、遠藤氏はXiborgを立ち上げた。ウォレス選手をはじめ、リオパラリンピックの400mリレーで銅メダルを獲得した佐藤圭太選手など日本人アスリートの走りを解析し、Xiborg νを開発した。

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