神奈川県を中心に、首都圏で約40店の書店を運営する有隣堂(横浜市)。100年以上もの歴史を持つ老舗書店のYouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」の登録者数が何と21年に入ってからの8カ月間で約27倍と急増し、話題を集めている。書店員と謎のキャラクターが繰り広げる本音トークになぜ多くの人が熱狂するのか、人気の理由を直撃した。
創業100年を超える老舗書店、有隣堂が展開するYouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」が話題だ。スタートしたのは、2020年6月末。人気テレビ番組をほうふつとさせるタイトルだが、出演するのは有隣堂の店員、そしてMCを担当するのは有名タレントではなく、ミミズクのぬいぐるみ「R.B.ブッコロー」だ。
「有隣堂しか知らない世界」の一番の魅力であり驚きは、商品を売ることを主目的としてつくられていないことだろう。7~8分にまとめられた動画では、淡々と商品を紹介したり特技を披露したりする店員と、ブッコローの本音の突っ込みがテンポよく繰り広げられる。宣伝臭を感じず、出演者の“素”が見える動画は中毒性があり、次々と何本も続けて見てしまう仕上がりだ。
YouTubeへのチャレンジは、「社長の鶴の一声」から始まった
有隣堂がYouTubeに進出したきっかけは、19年12月、副社長(現、社長)である松信健太郎氏の「これからの時代、必ず動画が必要になる。YouTubeチャンネルをやるぞ」という一言がきっかけだった。18年ごろから芸能人のYouTube参入が本格化し、ますます勢いが増していた時期だ。
参入の目的は3つある。
1つ目は、動画コンテンツによって新しい収益を生み出すこと。2つ目は、商品を取り上げることによる取引先との関係強化。そして3つ目は、縮小傾向にある書店業界で従業員が成功体験を得ることだった。
そこでまず、20年2月から3カ月のトライアル期間を設定し、配信をスタートした。「書店員つんどくの本棚」と銘打ち、本を解説するチャンネルだ。
本の解説動画はイラストを用いた力作ぞろいだったが、意外なことに登録者数は期待通りには増えず、再生回数も伸び悩む。結果は大惨敗に終わった。
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