需要に応じて価格を上げ下げするダイナミックプライシング。スポーツや音楽ライブなどのチケットへと導入を進めてきたダイナミックプラス(東京・千代田)が新たに手掛けるのはホテル業界だ。「コロナ禍こそダイナミックプライシングが重要」と力説する同社の平田英人社長に、ホテル向けサービス導入の意図と今後の展望を聞いた。

ダイナミックプラスの平田英人社長
ダイナミックプラスの平田英人社長

 日本経済に大きな打撃を与え続けている新型コロナウイルスの感染拡大。三井物産グループの子会社でダイナミックプライシング事業を展開するダイナミックプラスの平田英人社長は、「これまでとは全く異なる経済危機だ」と話す。そして、ダイナミックプライシングが果たせる役割も大きいと考える。

コロナ禍では価格によって行動が変化

 平田氏は過去の経済危機を振り返り、コロナ禍をこう捉える。例えば2011年の東日本大震災では、災害により企業・工場などの生産設備がストップ。物流をはじめとする供給が一時的に止まったことで「供給ショック」が起きた。また08年の金融危機、リーマン・ショックでは、金融システムへの不安から消費者が金融商品を購入しなくなり、需要が落ち込むことによって不景気になる「需要ショック」が起こった。前者は供給の生産設備が正常に稼働し、後者の場合は金融システムの信用力が回復すれば復興する。ところが今回のコロナ禍は対人を伴うサービスすべてが影響を受けており、収容人数制限や営業自粛などによって供給が止まり、感染症拡大の予防のために対人サービスがオンラインへ切り替わるなど需要も減少した。つまり、需給両面からのショックが起きている──。

新型コロナウイルス感染症が価格に与えている影響
新型コロナウイルス感染症が価格に与えている影響
注)ダイナミックプラスの資料を基に編集部で作成

 結果、コロナ禍では「(商品の)価値と価格がリセットされた状態」だと平田氏は言う。提供する商品が同じであっても、その価値と価格は変わるという意味だ。例えば、入店客数の制限を迫られた都内のとある人気飲食店では、時間帯によってランチの価格を変更している。同じメニューでも、混雑する12時~の価格を上げ、遅めの14時~は価格を下げるという、単純ではあるがダイナミックプライシングを導入。これにより来店客を分散させて密を回避しつつ、利益を上げることに成功したという。コロナ禍では、需要と供給の両面を見て、商品の価格や価値を見直すことが重要になっている。

 そして、価格を変動させることによって顧客の行動や需要をコントロールできるダイナミックプライシングは、コロナ禍で果たせる役割が非常に大きいと平田氏は考える。実際、20年9月の新型コロナウイルス感染症対策分科会では、Go ToトラベルなどGo To事業を実施する際、人の混雑レベルの調整や三密回避のため、割引率の調整などにダイナミックプライシングを導入することが提言されていた。

 事業者側にとっては、入店制限など密の回避に有効なのに加え、需要に対して価格を最適化することで、売り上げや利益のアップにつなげられる可能性もある。こうした考えをもとに、サッカーのJリーグやプロ野球、音楽ライブ、演劇などのダイナミックプライシングに取り組んできたダイナミックプラスが新たに進出したのがホテル業界だ。

このコンテンツ・機能は有料会員限定です。

有料会員になると全記事をお読みいただけるのはもちろん
  • ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
  • ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
  • ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
  • ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー
ほか、使えるサービスが盛りだくさんです。<有料会員の詳細はこちら>
5
この記事をいいね!する