気泡シート「プチプチ」のメーカーとしておなじみの川上産業(東京・千代田)は2021年7月1日、気泡の粒が四角く手で簡単にまっすぐ切れる新商品「スパスパ」を発売。SNSを中心にユニークなキャンペーンを繰り広げている。BtoBメインの商品でありながら話題性を狙うマーケティングに注力している理由は何か。

発売の決め手は小規模事業者や個人の発送需要増大

 川上産業の常務で同社が運営している「プチプチ文化研究所」所長も務める杉山彩香氏によると、スパスパは04年ごろから構想があり、かなり前にほぼ完成していたが、「スパスパ」の名に恥じないように“スパ感”を繰り返しテストし、フリマアプリなどが広く使われる現状を鑑みて発売したという。

 技術的に気泡シートで丸以外の粒を作るのはかなり難しいが、同社は04年ごろに気泡がハート形のプチプチ「はぁとぷち」の開発に成功。四角や星型のプチプチも試作レベルでは完成させていた。05年ごろからは、「手で切ることができるプチプチがあったら便利なのでは」と開発をスタート。その際、“碁盤目のように整列して並べられる”という特性から、四角い気泡のプチプチを採用した。

 早くから開発が進んでいたのに発売に至らなかった理由は主に2つ。スパスパの名に恥じない品質を追求したことに加え、「プチプチといえば丸」と半世紀にわたって顧客や一般に浸透しているので、四角い形状が受け入れられるかを慎重に検証したためだ。

 18年ごろに技術的に「スパスパ」の名に恥じないスパッとした切れ味が完成し、19年ごろから発売が現実味を帯びてきた。その矢先にコロナ禍があり、また発売が見送りに。だがその後の巣ごもり需要増加でEC(電子商取引)が伸び、小規模事業者や個人の発送需要が増大。スパスパの発売が決定した。

スパスパは粒の間に太いミゾ(スパミゾ)があり、その部分に手で切り込みを入れることでスパッと切れる。開梱時も手でスパッと切って開けることができる
スパスパは粒の間に太いミゾ(スパミゾ)があり、その部分に手で切り込みを入れることでスパッと切れる。開梱時も手でスパッと切って開けることができる
粒が四角く、碁盤目配列で粒が数えやすいため、スパスパならではのメジャー機能もある。同社では四角い粒を「1スパ」として、必要な量の目安をウェブサイトに掲載している
粒が四角く、碁盤目配列で粒が数えやすいため、スパスパならではのメジャー機能もある。同社では四角い粒を「1スパ」として、必要な量の目安をウェブサイトに掲載している

「プチプチの日」に一般向けキャンペーンを10種類実施

 同社では、00年に8月8日を「プチプチの日」に制定(日本記念日協会認定)。例年は全国の事業所近くの街頭でプチプチグッズ1万個を無料配布していた。だが、20年はコロナ禍の状況を考慮して初のオンライン開催に。21年もそれを踏襲。スパスパの発売を記念してオンライン上で『超プチプチ祭り』を開催、10種類のキャンペーン企画を実施した。

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