「TANPACT(タンパクト)」は明治が展開する食品シリーズだ。飲料から菓子、冷凍食品までカテゴリーの枠を超え、現在は23もの商品を取りそろえる。「日常的にたんぱく質を摂取できる食品」という共通のコンセプトはあるものの、製造工場も売り場も異なる商品をここまで幅広く、同一ブランドで扱うケースは異例だ。全社を挙げて同シリーズの定着を図る背景には、たんぱく質不足への問題意識と自社の強みを象徴する商品を作ろうとする同社のブランド戦略がある。

明治が展開する「TANPACT(タンパクト)」。食品カテゴリーを横断した23もの商品からなる
明治が展開する「TANPACT(タンパクト)」。食品カテゴリーを横断した23もの商品からなる

 明治は2020年3月にTANPACTシリーズを発売した。当初は、飲料、ヨーグルト、チョコレート、アイスクリーム、冷凍食品など全14商品を投入。その後もビスケットなどを追加し、現在、明治が販売する商品数は23に上る(8月17日現在)。

 食品・飲料メーカーが独自のブランドで複数の商品を展開すること自体は一般的だ。ただ、製造工場も売り場も異なる商品をここまで幅広く、同一ブランドで扱うケースは異例。しかもシリーズ立ち上げ時からだ。TANPACTを担当する明治 マーケティング本部 マーケティング企画部 価値共創推進グループの島貫周(しまぬき・ちか)氏も「(全商品で統一の)商標を取るだけでも大変だった。ある商品では登録できても別の商品では問題があるということもあった」と開発時の苦労を苦笑いと共に明かす。

 異例ゆえの苦労は販売開始後も続く。「商品の販路には、スーパーやコンビニなど直接やりとりするもの、問屋を挟むものがあるが、いずれにしろ商品カテゴリーごとの縦割り。それを横断して営業や販促活動を展開するという経験はこれまでにない」(島貫氏)。例えば、TANPACTシリーズで販売している「アイスバー」と「えびグラタン」は販売時の温度帯こそ同じだが、店舗での陳列棚も消費者の利用シーンも異なる。スーパーなどの仕入れ担当者が別なことも多い。

 しかも、「日常的にたんぱく質を摂取できる食品」という特徴も現状、消費者に伝わりやすいとは言えない。近年は、健康志向の高まりで、栄養面、機能面に着目した食品のニーズは高まっている。ただし、一般に人気が高いのは低糖質や低カロリー、低添加物をうたう食品。高たんぱく質を売りとする商品はヨーグルトやチキン、プロテインバーなどに限られる。

 同社でも「ザバス」ブランドでプロテインのほか、ドリンクやヨーグルトなどを販売しているが、「高たんぱく質というと筋トレに熱心な人やアスリートのものというイメージを持っている人が多い」と島貫氏は話す。

旧乳業と旧製菓の強みを生かす製品を

 それでも同社がTANPACTに活路を見いだした理由は大きく分けて3つある。

 1つは、日本人は総じてたんぱく質の摂取量が不十分という社会課題があることだ。厚生労働省のデータによると、日本人の1日当たりのたんぱく質摂取量平均は1995年の81.5グラムをピークに年々減少。近年は筋トレブームなどもあって回復基調にあるものの、2019年は71.4グラムと1950年代と同水準にとどまる。たんぱく質の摂取不十分は、筋肉量の低下に伴う基礎代謝量の低下とその結果の肥満、高齢者のフレイル(加齢による心身の衰え、虚弱)にもつながる。

日本人の1人1日当たりのたんぱく質摂取量の年次推移(総量)
日本人の1人1日当たりのたんぱく質摂取量の年次推移(総量)
「国民栄養の現状」(1947~93年)、「国民栄養調査」(94~2002年)、「国民健康・栄養調査」(03年以降)を基に編集部で作成

 2つ目は、その市場性だ。たんぱく質摂取の重要性に対する認識は世界的にも広がっており、関連する商品の市場も成長している。ただ、「プロテイン大国」といわれる米国はもちろん、欧州などと比べても日本の市場は小さい。「英国と比較すると日本は3分の1ほど。先に挙げた社会課題を見ても今後、伸びる余地は十分にある」(島貫氏)

 そして3つ目が同社の強みを生かせることだ。明治グループは09年に明治乳業と明治製菓を経営統合し、明治ホールディングスを設立。11年のグループ再編で、食品事業を担う事業会社として現在の明治を発足させた。それ以前から、明治乳業は牛乳やヨーグルト、乳幼児向けの粉ミルク、流動食の「メイバランス」といった乳製品を、明治製菓はプロテインブランド「ザバス」を販売していた。「その2社が経営統合して10年。幅広い食品を扱う企業になったにもかかわらず、旧乳業と旧製菓で横断的な事業は展開できていなかった。経営の視点から、明治としての象徴的なブランドを作りたいと考えたときに、両社が共に強みを持つたんぱく質は最適だった」と島貫氏は説明する。

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