昨今、様々な業界でDX(デジタルトランスフォーメーション)化が進んでいるが、畜産分野は出遅れが著しい。そうした中、養豚場にAI(人工知能)技術を導入し、膨大な“ピッグ(Pig)データ”を活用した生産性向上に挑むのが、畜産スタートアップのコーンテック(熊本市)だ。プリマハムのグループ会社と共同で、世界最先端の養豚場の建設にも乗り出す。畜産テックによるおいしい豚肉の未来に迫った。
コーンテックは、養豚場向けに自家配合飼料のプラント建設とコンサルティングサービスを提供するスタートアップだ。一般的に国内の養豚場は高い価格の配合飼料を海外から輸入しているため、コストがかさみ、利益を出しにくい構造になっているケースが多い。同社によると家畜の餌代は経営コストの60%以上を占める。これが経営状況を悪化させ、後継者不足の要因にもなっている。実際、国内の養豚業者は2021年で3850戸と、10年前と比べて36%も減っているのが現状だ。
そこで、コーンテックは養豚業者の敷地内のプラント建設を請け負い、自家配合で飼料を安く作れる体制を整え、最適な飼料作りを指南している。それにより、飼料コストを2~3割以上も削減し、利益率を向上させてきた。導入実績は既に100件以上あり、全国各地で「もうかる畜産」の実現に貢献している。
AIカメラで豚の生育状態を計測
そのコーンテックが、近年力を注いでいるのが、AIの導入を中心とした養豚場のDXだ。まず、豚舎の天井付近にAIカメラ「PIGI(ピギ)」を設置。画像認識技術などを駆使して、豚舎内で飼育されている個々の豚の体重、体温を推測し、合わせて外気温、湿度、音声などのデータを時系列で収集する。
体重は個体ごとに、肩や骨格、臀部(でんぶ)の骨盤の比率、表面積などの画像データからAIが自動的に推定する仕組みで、最大50頭まで同時計測が可能だ。実測の体重との誤差は1%以内という正確さであり、ディープラーニングを重ねることで精度は増していくという。
実は、こうして個々の豚の正確な体重をリアルタイムで知ることは、養豚場にとって大きな利点となる。体重が減っていれば、「餌を十分に食べていないのではないか」「何か病気ではないか」と負の兆候を察知できる。その結果、餌の配合を変える、別の豚舎に移す、注射をして治療するなど、個別に改善を図ることが可能になるからだ。
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