クレジットカード大手の三井住友カード(東京・江東)が発行した「三井住友カード(NL)」が快調だ。2021年2月のリリースから約5カ月で発行枚数が50万枚を突破。同年7月にはゴールドカードも発行し、勢いに拍車がかかる。ヒットの理由は、安心・安全に加え、利便性やお得さを備えた点だろう。ユーザーニーズに応える方向へとかじを切った理由と、その戦略を探る。
テレビCMをはじめ、精力的にプロモーション活動を行っている「三井住友カード(NL)」(NLはナンバーレスの略。以下ナンバーレスカード)の発行枚数が約5カ月で50万枚を超えた。同社が単独で発行している個人向けのカード(提携カードを除く)の約10%を半年程度で獲得するという破竹の勢いだ。しかも申込者は、既存会員の乗り換えよりも新規顧客のほうが多く、20代が最多で3割を占めるという。
スタートは、現金よりも安心・安全
なぜ、これほどまで支持を得ているのだろうか。その理由は3つありそうだ。1つ目は、その名の通り「ナンバーレス」であること。クレジットカードの券面からカード番号や有効期限、セキュリティーコードの記載を取り去った。盗み見による不正防止など、ユーザーの目に見え、分かりやすいセキュリティー対策となっている。
ナンバーレスカードの商品設計からカード発行までを担当した商品企画開発部 部長代理の藤原貫司氏は、開発の背景をこう話す。「18年ごろのキャッシュレス決済のブーム・過熱により、非現金化に流れが片寄った一方、当時はまだ現金の方が安心・安全という意識も根強かった。そこで、安心・安全への不安を払拭したキャッシュレス化を促進しようと考えた」
ナンバーレスカードの導入は、クレディセゾンの「SAISON CARD Digital」に次ぐ2社目。カードの券面から番号をなくすだけならば簡単に作れそうに思えるが、「カード番号を表示する簡便性とセキュリティー対策のバランスの考慮が困難だった」と藤原氏は言う。カード券面に番号がなくても、リアル店舗ではICチップや磁気ストライプを用いて従来通りの決済が可能。ただし、ネットショッピングでの利用などでは、カード番号の入力が必要になる。ナンバーレスカードではカード番号の確認に会員専用スマートフォン向け「Vpassアプリ」を活用。初回は電話やSMSによる本人認証を行うことでカード番号が表示できる。以降は、顔や指紋などの生体認証のみで表示可能な仕組みとした。これにより2ステップで簡単にカード番号を確認できるようにしている。
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