サントリービール(以下、サントリー)が2021年4月13日に新ブランドとして発売した糖質ゼロの「パーフェクトサントリービール」が好調だ。21年の売り上げ目標は230万ケースだが、7月中旬には目標の半分を突破する勢い。開発やブランディング、デザインの狙いなどをマーケティング本部イノベーション部の稲垣亜梨沙氏に聞いた。
――発売後、6月末で約3カ月が経過しましたが、商品の売れ行きはいかがですか。
稲垣亜梨沙氏(以下、稲垣) 6月末までに100万ケース(1ケースは大瓶633ミリリットル瓶×20本換算)の売り上げを達成するなど、かなり好調だったと判断しています。21年の売り上げ目標は230万ケースですが、7月中旬には目標の半分を突破する勢いです。
――開発のきっかけは?
稲垣 開発の根幹にあったのは「ビールの時間だけは、最高の時間を提供したい」という当社の思いです。「ビールは太るので控えよう」といった健康意識を持つ人が多くなり、「ビールを飲むことを心の底から楽しめない人が増えているのではないか?」と考えるようになりました。そこで「何も我慢せず、飲んで楽しめる『最高においしく開放的なビール』を造ろう」と16年に開発をスタートさせました。発売までに5年かかっています。
糖質ゼロのような、いわゆる機能系ビール類の市場にはかなりのポテンシャルがあります。当社の推定では、国内における20年のビール類(缶)総市場は業界全体で約2億8100万ケースありました。このうち機能系ビール類を飲みたいというユーザー層の市場をケース換算すると、約1億8000万ケースに相当します。しかし「機能系ビール類の味に満足している」というユーザー層は少なく、ケース換算で約2200万ケースでした。そのためサントリーでは、機能系ビール類には約1億6000万ケースの潜在的需要があると考えています。
今、ビールには追い風が吹いていると感じています。20年10月の酒税法の改正でビールの税金が下がり、第3のビールといわれる新ジャンルの税金が上がりました。それによって、ビールを購入する人の数が増加したのです。「本当はビールが飲みたかったが、価格が安いから新ジャンルを飲んでいた」という人が多かったのでしょう。当社では20年11月に「酒税法改正を踏まえて、今後ビールを飲む機会は増えそうか?」というアンケートを実施した結果、約6割の人が「増えそう」と回答しました。酒税法は段階的に改正され、最終的にビールと新ジャンルは同じ税率になります。今後、ビールを選ぶ人はさらに増えるでしょう。中でも機能系ビール類は、健康を意識するユーザーからますます人気になると考えています。
サントリーの醸造技術を結集
――開発でこだわったことは?
稲垣 目指したのは、「ビールど真ん中のおいしさと糖質ゼロを両立した、これからの時代のニーズに合ったビール」。これからの時代のビールは、味がおいしいことはもちろん、お客さまのニーズに合った機能性を兼ね備えていることが必須だと考えています。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー