新型コロナウイルス感染症の拡大で、さらに関心が高まるオンライン診療。糖尿病や高血圧など慢性疾患患者への普及が叫ばれる中、JCOMは高齢者でも活用できるようテレビを活用したオンライン診療サービスを始めた。オフラインでもサポートを徹底することで、デジタルに対して苦手意識を持つ人でも使えるサービスを目指す。
ケーブルテレビ最大手のJCOMは、2021年7月1日からテレビを活用したオンライン診療サービスを始めた。慢性疾患を持ち定期的に通院する必要がある高齢者をターゲットに、彼らが使い慣れた家庭のテレビを使い、オンライン診療を普及させたい考えだ。
第1弾は、東京都杉並区、練馬区、板橋区、北区、埼玉県和光市、新座市、千葉県木更津市、君津市、袖ケ浦市、富津市がサービス対象範囲。21年度内には、全国のJ:COMエリア内での展開を予定しているという。
予約から診療までテレビで完結
このオンライン診療には、同社が提供するケーブルテレビのチューナー機器「J:COM LINK」とWebカメラを使用。J:COM LINK内に搭載されているアプリから、テレビのリモコンを使って診療予約や問診を事前に行う。当日、診察時間になると、番組視聴中であっても画面が切り替わり、医師とのビデオ通話がスタートする。事前の問診を基に、ビデオ通話での診察が終わると、後日、処方箋が郵送で届く。
サービス展開に当たって、JCOMはオンライン診療サービスを手掛けるMICIN(マイシン、東京・千代田)と提携している。医療機関側は、MICINが提供するオンライン診療サービス「curon(クロン)」を用いて、予約や問診の確認、ビデオ通話による診察、決済、処方箋の発送などが行える。
オンライン診療1回につき、利用料が税込み330円かかる。この利用料と医療費は、診療ごとにクレジットカードでJ:COMに一括して支払う。医療機関はJ:COM、MICINを通して医療費を受け取る仕組み。病院までの交通費や診察の待ち時間を考えると、利用料も安く感じられるかもしれない。
事業に乗り出したきっかけは、社内のベンチャー制度「J:COM Innovation Program」だった。同制度は新規事業を創出するのが目的で、18年から毎年1回開催している。第1回開催時には約300件の事業案が集まり、その中から選ばれた1つが「オンライン診療サービス」だったというわけだ。
一見ケーブルテレビの会社がオンライン診療に乗り出すのは、“飛び地”事業のように思える。だが、「テレビと地域に根付くサポートが、J:COMの大きな強み。その2つをうまく生かしたサービスだと判断され、事業化を進めることになった」と、JCOMビジネスイノベーション部門イノベーション推進本部ビジネス開発第1部部長の松浦正人氏は話す。
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