
0~10の11段階評価で9、10を付けた推奨者の割合から0~6を付けた批判者の割合を引き算して推奨意欲をスコア化するネット・プロモーター・スコア(NPS)。だが回答傾向は国によって異なり、特に日本は低スコアが出やすい。そこで、NPSをアレンジすることで欧米企業のスコアと対等に比較が可能になる計算式「PSJ」が提唱されている。

前回、「フツーを付けただけなのに NPSが日本だけ低評価になるカラクリ」の記事で、日本人が選択肢の真ん中を選びやすい中間回答、曖昧回答の傾向が強いこと。それによってネット・プロモーター・スコア(NPS)の0~10までの11段階採点においても真ん中の5が選択されやすいことを説明した。
さて、そうすると何が起こるか。マイナス2桁のスコアはモチベーションの点で難はあるものの、同程度のスコアの国内競合企業に負けないように改善に努める分にはさして支障はない。だが顧客は国内にとどまらず世界に広がるグローバル経営の時代、海外の競合企業とスコアがあまりに開いていると、物差しとしての信頼性に関わってくる。実際、米国でのNPS調査と国内のNPS調査のスコアには著しい乖離(かいり)がある。
例えば航空会社のNPS平均スコアは、米国が+40台(米ナイスサトメトリックス調査)に対し、日本は-17.1(NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション調査)。米国のトップ企業はアラスカ航空でNPSスコアが+70前後であるのに対し、日本のトップはANAでスコアは-6.6。スコア差70超という大差だが、これでもまだマシなほうだ。
携帯事業者では、米国トップ企業の米クリケットワイヤレスのスコアが+50前後であるのに対し、日本はMVNO(仮想移動体通信事業者)でトップのmineo(マイネオ)が-21.3、大手キャリアでトップのNTTドコモは-47.0に位置する。さらに自動車保険では、米トップのUSAAが+60台。対する日本はダイレクト型自動車保険トップのソニー損害保険が-20.2、代理店型自動車保険トップの東京海上日動火災保険が-40.4と引き離され、USAAと東京海上日動のスコア差は実に100を超える。
日米トップ企業でここまでスコア差が開くと、世界共通の尺度として活用するには支障が、そして誤解が生じる。NPSを導入しているグローバル企業の日本法人トップは、NPSスコアの日本の特殊性を本国に理解してもらうことが最初にして最大の仕事といってもいいだろう。
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