LINEは2021年5月14日、全国各地のMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の普及拡大に乗り出すと発表した。マイクロソフトが提供するクラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」を活用し、Azureの開発パートナー4社と共同プロジェクトを行う。巨大プラットフォーマー・LINEは、なぜ今、MaaS領域に打って出たのか。
複数の交通手段をスマートフォン1つで検索・予約・決済可能にし、シームレスな移動体験をつくり出すMaaSの取り組みは、2018年ごろから鉄道会社を中心に国内各地で行われている。MaaSアプリを通じた周遊デジタルチケットや観光施設のチケット販売、タクシーの配車アプリ、自転車シェアリングなどとの連携が進み、一度使ってみれば便利なものだ。しかし、その多くは一般に浸透しているとは言いがたい。
大きな要因の1つは、「独自アプリの壁」にある。現在のMaaSアプリは主導する鉄道会社などのエリアごとに“乱立”した状態で、利用するにはそれぞれアプリをインストールし、会員情報の登録などセットアップが必要。アプリごとの独自UI(ユーザーインターフェース)に慣れる負担もユーザーに強いている。
例えば、旅行前にこれから出掛ける観光地で使えるMaaSアプリをわざわざ入手してもらうのは、ハードルが高い。また、旅行後にアプリを継続利用してもらうのも至難の業だ。実際、東急やJR東日本などが静岡県の伊豆エリアで実証実験を重ねてきた観光MaaS「Izuko(イズコ)」では、19年4月からのフェーズ1で専用アプリを提供したが、普及と使い勝手に課題を残した。その後は、アプリではなく、Webブラウザーベースでの展開に切り替えている(関連記事「観光MaaSの成功と失敗 東急がIzukoで学んだこと」)。
・観光MaaSの成功と失敗 東急がIzukoで学んだこと
LINE、MaaS参入の狙いは?
提供価値は高いのに、“入り口”が狭い――。どの分野のネーティブアプリも抱える問題だが、まさに今、多くのMaaSアプリがはまっている“沼”と言える。
この現状を変え得るのが、国内の月間アクティブユーザー8800万人(21年3月時点)を誇るLINEだ。LINEプラットフォーム事業開発室ビジネスデザインチームの福田真氏は、「ユーザーが普段から慣れ親しみ、実際に使ってもらえているLINEのサービス基盤を活用すれば、日々の生活や観光を支えるMaaSの恩恵をもっと多くの人に届けることができる。身近で簡単なMaaS事例を量産し、ムーブメントをつくっていきたい」と話す。
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