コロナ禍でも伸長を続ける無糖炭酸水市場は2020年に過去最高の売り上げを記録。ただプレーン炭酸水はガス圧競争も成熟し、差異化が困難に。そんな中、サントリーは強炭酸水をじか飲みする健康ストイック層にターゲットを絞り、見た目と触り心地の「感覚」に訴える戦略を打ち出した。
「五感」訴求で伸び悩みを打破
サントリー食品インターナショナルが2021年6月29日に発売した「THE STRONG 天然水スパークリング」は、「サントリー天然水」ブランド史上最高ガス圧の強炭酸水だ。実は同社は18年にも強炭酸水として「サントリー天然水スパークリング」を発売している。いずれもサントリー天然水に炭酸を加えたもので、中身自体はそれほど変わっていない。
新商品の最大の特徴は、そのボトルデザインだ。ボトルの肩から中央にかけた“バキバキ”ととがった形状と、キャップとラベルの光沢のあるシルバーで潔い強さを表現している。キャップは特殊構造で、開栓時の音が際立つよう設計した。この独特なボトルデザインの狙いは「五感、とりわけ触覚に訴えること」だと、サントリー食品インターナショナル ジャパン事業本部ブランド開発事業部課長の平岡雅文氏は語る。
10年から20年にかけて約8倍と成長し続ける無糖炭酸水市場では、アサヒ飲料「ウィルキンソン」シリーズが圧倒的だ。13年連続で過去最高の販売数量を更新し、約5割のシェアを占める。そのウィルキンソンは以前から強炭酸を訴求。それに続き、18から19年にかけて他社も続々と強炭酸製品を市場に投入した。21年5月には日本コカ・コーラが同社最高ガス圧の「アイシー・スパーク from カナダドライ」を発売。もはやガス圧競争は成熟しており、それ以外の付加価値をどう打ち出すかが差異化の鍵となっていた。
一方、サントリーはフルーツなどの香りの付いたフレーバー炭酸水で存在感を発揮し、21年1~5月の累計で天然水スパークリングシリーズ全体が過去最高販売数量を記録。ただ無糖炭酸水市場全体では割り材需要もあるプレーン(フレーバーなどが入っていない)炭酸水が大勢を占める。サントリーはプレーン炭酸水での訴求が不十分であることに課題を抱いていた。
そこで同社が目を付けたのが、割り材としてではなく“じか飲み用”としてプレーン炭酸水を買う層。フレーバー炭酸水はエントリー層が好む一方、プレーン炭酸水はよりストイックに健康を意識する40代男性が好んで買う傾向にあるという。同社は“ストイック層”をターゲットにした製品開発で、まだ十分に浸透しきれていないプレーン炭酸水での巻き返しを図ることにした。
「プレーン炭酸水を好む人はとにかく強い刺激を求めており、『フレーバーすら邪魔』という意見まであった。そこで我々は、プレーン炭酸水はリフレッシュツールとして求められているのだと気づいた」(同社ジャパン事業本部の村上公規氏)
そこで打ち出したのが、「触り心地」に訴えるという戦略だった。
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