段ボールや梱包材の受発注プラットフォームを運営するベンチャー企業が、コロナ禍で大躍進を遂げている。段ボールというアナログが主流だった業界にデジタルで切り込み、ここ5年間で売上高は約10倍に。急成長を可能にした「3つの理由」をひもといた。

段ボールや梱包材の工場とユーザーをつなぐプラットフォーム「ダンボールワン」は、コロナ禍で急成長を遂げている
段ボールや梱包材の工場とユーザーをつなぐプラットフォーム「ダンボールワン」は、コロナ禍で急成長を遂げている

 コロナ禍で外出自粛による巣ごもり消費が増え、ネットショッピングの利用が急拡大している。そんな中、2015~20年の5年間で売上高が10倍、20年度の売り上げも前年比約2倍を記録するなど急成長しているのがダンボールワン(金沢市)だ。

 ダンボールワンは、段ボールや梱包材の通販サイト「ダンボールワン」を運営している。日本全国の段ボール工場とユーザーをつなぐプラットフォームで、個人も法人も段ボール1枚の発注から利用できるのが特徴だ。

 同社は全国に約100の提携工場のネットワークを持っている。各工場の閑散期や非稼働時間を活用して生産することで、小ロットから大ロット、企業ロゴなどを印刷したオリジナル段ボールまでさまざまなニーズに対応可能だ。すでに顧客は30万社を超えスケールメリットを生かせるほか、受発注をすべてウェブで行うので工場まで直接営業に行き見積もりを作る必要がない。人件費や販売管理費を抑えられているため、最大で90%コストを削減できているという。

 ダンボールワン代表の辻俊宏氏は、短期大学在学中の02年に食品のECサイトを立ち上げた経験を持つ。その事業会社を売却した後、もう一度ゼロからIT関連のビジネスを立ち上げたいと考えていたところ、04年当時まだアナログが主流だった製造業に目をつける。「製造業も今後デジタル化していくのが時代の流れだと思っていたが、そもそも製造業を経験したことがなく、理解が浅かった。そこで、大企業より町工場など小さな企業を見ることで、製造業に対する知識が深まり、何か事業になるものが見つかるのでは」(辻氏)と考え、ハローワークで見つけた能登紙器(現ダンボールワン)に入社する。

 能登紙器はもともと段ボールなど梱包資材を製造販売する企業だった。当時の従業員数は5人。一番驚いたのは、社内にPCがないことだった。「納品書や発注書はすべて紙。しかも手書きで行っていた。当時の段ボール業界ではそれが一般的だったが、僕にとってはブルーオーシャンだと感じた」と辻氏は当時を振り返る。

 まずは紙で行っていた業務をデジタルに変えていった。製造仕様書という現場で使う指示書や請求書をデジタルにしたほか、これまで営業が先方へ伺い、作成していた見積書を、ウェブ上でサイズや材質を入力すれば自動で見積もりが出るシステムを構築した。その後、自社生産の梱包資材をインターネットで販売するためECサイトを開設、約10年でECの売り上げが全社の9割を占めるまでになった。

 17年に辻氏がMBO(経営陣が参加する買収)を実施し、代表に就任。「段ボール業界の市場規模は約1兆5000億円。業界最大手は数千億円を売り上げ、毎年、数十億程度の設備投資をしている。そんな企業に自社生産は勝てないと思った」(辻氏)。そのため、設備投資ではなくテクノロジーやマーケティングに資金を集中させ、今の他社工場の遊休時間とユーザーをつなぐプラットフォームという新たなビジネスモデルを確立させていった。

1枚4.6円から販売

 ビジネスモデルを転換して以降、ずっと右肩上がりの同社だが、コロナ禍でさらに急伸を遂げている。その理由は3つだ。

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