河出書房新社(東京・渋谷)が出版する季刊文芸誌「文藝」が異例のヒットを続けている。2019年春にリニューアルを実施し、実売部数をそれ以前から3倍以上も伸ばした。新しい読者層を獲得し、長年停滞していた文芸誌を再生させた戦略とは。

リニューアル後の文藝バックナンバー。それまでのシンプルなデザインが一新され、カラフルでポップになっている
リニューアル後の文藝バックナンバー。それまでのシンプルなデザインが一新され、カラフルでポップになっている

「文芸誌は売れない」の声にムカついて

 出版不況や若者の本離れが危惧されるなか、河出書房新社の文芸誌「文藝」が2019年夏季号(19年4月5日発売)のリニューアル以降、勢いに乗っている。同社の企画広報担当によると、リニューアル後から実売部数が大幅に伸び、 1933年の創刊号以来となる3刷を2度も記録した。定期購読数はリニューアル時から現在にかけて10倍以上伸びているという。

 リニューアル後の購買層を見ると、20~40代の女性の割合が大幅に増加。これまでにない読者層の獲得にも成功している。長年「売れないもの」として扱われてきた文芸誌をどのようにヒットさせ、新規読者を取り込んだのか。そこには出版不況を逆手に取った戦略があった。

 19年1月に編集長となり、文藝をリニューアルで復活させた坂上陽子氏は当時の状況をこう振り返る。

 「編集長になることが決まる前から、『文芸誌は売れない』とか『文学なんてもう誰も読まない』と言われることに結構ムカついていて(笑)。面白い作品を書く作家はたくさんいるのに、そういったことを当たり前のように言われてしまうのがすごく嫌でした。業界内部の人でさえ、売れないビジネスとして文芸誌や文学を認識しているのがとても嫌で、とにかく(当時の)現状をすべて変えたいなと」

「文藝」の坂上陽子編集長。2019年1月に編集長になった直後に、リニューアルを任された
「文藝」の坂上陽子編集長。2019年1月に編集長になった直後に、リニューアルを任された

 現状をすべて変えたい――その言葉通り、坂上編集長を中心とした編集部はリニューアルで作品の見せ方を大胆に変えた。これまで文芸誌になじみのなかった若年や女性層に、作品の魅力が届きやすくなる工夫を施したのだ。

文藝の編集部員。 左から竹花進氏、坂上編集長、矢島緑氏
文藝の編集部員。 左から竹花進氏、坂上編集長、矢島緑氏

ホットなテーマを扱い、新規層にアプローチ

 リニューアルのポイントは主に2つ。「特集」を組んだことと、「表紙のデザインを一新」したことだ。

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