国土交通省が2021年内に実証実験を計画しているタクシーの変動運賃制(ダイナミックプライシング)。配車アプリを活用し、乗りたい人が多い場合は割増運賃を提示するなど、需給に応じて運賃を上下させる仕組みだ。世界70カ国で主に自家用車を使ったドライバーと乗客をマッチングする配車アプリを展開している米ウーバー・テクノロジーズは、すでに大多数の国で導入しており、今回その有効性を示すデータを公開した。コロナ禍で利用減が続くタクシー業界の需要喚起策となるか。
米ウーバー・テクノロジーズは現在、日本では複数のタクシー事業者と組み、全国12都市でタクシーの配車サービス「Uber Taxi」を展開している。国内では地域ごとに一律のタクシー運賃が決められており、まだダイナミックプライシング(DP)は導入されていないが、海外ではスタンダードな仕組みだ。
国内のタクシー業界は1990年をピークに毎年のように右肩下がりで売り上げが減少し、コロナ禍による外出自粛がさらに追い打ちをかけている。そんなタクシー業界にとって、「ダイナミックプライシングの導入が業界を盛り上げるチャンスになる」(Uber Japanモビリティ事業ゼネラルマネージャーの山中志郎氏)という。
では、ウーバーが海外で実装しているダイナミックプライシングの効用を見ていこう。まず、仕組みとしては、アプリ経由の配車依頼(需要)とエリア内の車両数(供給)などのリアルタイム情報を基に、マッチングが最大化されるようにアプリで提示する運賃を自動で変動させるものだ。要は、乗りたい人が多い場合は運賃が高くなり、乗りたい人が少ない場合は安くなる。これをリアルタイムで調整する。
海外では、提示する運賃を文字通りダイナミックに変動させている。例えば、シドニーのボンディビーチの運用実績では、平日の夕方辺りで運賃の割増率が2倍を超えることもしばしば。その日、そのときの需給により割増率は決まるので、同一エリアでも日によって異なるが、おおむね仕事が終わった夕方にビーチを訪れる人が増え、割増運賃が発生する傾向だ。利用が集中するニューヨークでは割増率が6倍に達することも珍しくないという。
ダイナミックプライシングの効用とは?
これでは、ダイナミックプライシングを導入しても運賃が高くなるだけではないか――。そう考えるのは早計だ。
ウーバーのアプリではリアルタイムの需要ヒートマップがドライバー側の端末で把握できる。ドライバーは需要が高いエリアに移動して乗客をピックアップすれば、割増運賃に応じた高い報酬を獲得できる。そのため、多くのドライバーが割増運賃の発生エリアを目指すことになる。その結果、需要に対して十分な車両が集まると、割増運賃が解消され、通常料金に戻る。「米国では、現在地の割増率が高い場合にスターバックスへ行ってコーヒーを1杯飲んだり、友人と雑談したりする間に通常料金に戻っている感覚」(山中氏)という。
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