「GLOBAL WORK(グローバルワーク)」や「LOWRYS FARM(ローリーズファーム)」などを展開するカジュアル衣料大手のアダストリアは、自社ECサイト「.st(ドットエスティ)」とリアル店舗をつなぐOMO(Online Merges with Offline:オンラインとオフラインの融合)戦略を推進する。目指すのは会員データの活用と、スタッフとのコミュニケーションを増やすことによる顧客体験の向上だ。OMO型店舗の出店後、わずか1週間で、周辺の既存店売り上げが大幅増となるなど、成果を見せている。

OMO型の新店舗「ドットエスティ ミッテン府中店」の店頭。従来ならウインドーディスプレーを置いている壁面に大画面を配置して、自社ECサイト「.st」のプロモーション映像を流している。店舗に人を呼ぶと同時に、ECサイトの宣伝も狙っている
OMO型の新店舗「ドットエスティ ミッテン府中店」の店頭。従来ならウインドーディスプレーを置いている壁面に大画面を配置して、自社ECサイト「.st」のプロモーション映像を流している。店舗に人を呼ぶと同時に、ECサイトの宣伝も狙っている

 アダストリアは2021年5月、自社ECサイト「.st」で販売する人気商品をブランド横断で集めて販売する初のOMO型店舗「ドットエスティストア」を2店舗出店した。

 同社のEC事業は近年2桁成長を続け、21年2月期の国内EC売上高は前期比23.4%増の538億円を記録した。これは同社の国内売上高の30.6%に達し、そのうち.stの売上高がおよそ半分を占める。

 .stでは、約1200万人の会員の顧客情報を分析し、各会員のパーソナルなデータを把握してきた。今回、OMO化を進める理由は、ECとリアル店舗を含めてパーソナライゼーションを実現し、顧客体験の質を向上させたいからだ。売れ筋商品を紹介したり顧客一人ひとりにリコメンドしたりできるリアル店舗の実現により、顧客は欲しい商品をより手に取りやすくなる。

 同社は約30のブランドを持ち、20~40代をメインターゲットとする。ただ、ブランドごとにターゲットが異なるため、リアル店舗を出店する際には、出店先の特性を踏まえ、顧客層の年齢や購買傾向などに合わせてブランドや商品を配置したい。

 そこで、新たに出店したOMO型店舗ドットエスティストアでは、その地域の顧客層と各ブランドをひも付ける仕掛けとして、「来店ポイント」を付与することにした。スマートフォンアプリで会員コードを表示し、それを店舗の端末で読み取らせると、来店ポイントが付く。これにより、どの会員が店舗を訪れたかが分かる。その会員がその後、店舗や.stでどんな商品を購入したのかも把握できる。

 この仕組みにより、OMO店舗の来店履歴と.stを含む購入履歴から、例えば、「この店舗を訪れるのは20~30代の会員が多く、こういう購買傾向が強い」といった分析ができ、それに合わせて店頭の品ぞろえを更新できる。

会員の行動を知るために「来店ポイント」を付与する。会員はスマホアプリでポイントをためられる
会員の行動を知るために「来店ポイント」を付与する。会員はスマホアプリでポイントをためられる

 分析したデータは、OMO型店舗ドットエスティストア内に設置したデジタルサイネージを使った4つのサービスにも活用する。4サービスとは、全国の店舗から選ばれた人気のショップスタッフが提案するスタイリングを見せる「STAFF BOARD」、.stのランキングと連動した商品を棚に並べる「トレンドランキング」、各ブランドが薦める商品が並ぶ「ブランドリコメンド」、店頭のスタッフに1対1でスタイリングを相談できる「パーソナルスタイリング」だ。

画面右奥の縦長のデジタルサイネージに映っているのは「ブランドリコメンド」。自社ECサイト.stのリコメンド機能を店頭で実現し、店内の棚から選んで試着してもらう
画面右奥の縦長のデジタルサイネージに映っているのは「ブランドリコメンド」。自社ECサイト.stのリコメンド機能を店頭で実現し、店内の棚から選んで試着してもらう

ショールーミング対応とは違う

 とはいえ、こうした施策によってアダストリアが提案するのは、パーソナライズによる効率性だけではない。顧客がリアルで買い物を楽しめる「情緒的なOMO」の仕組みだ。

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