クリエイティブディレクターの佐藤可士和氏が主導した団地再生プロジェクトが発足して10年を迎えた。舞台は横浜市の洋光台団地で、50年前に同団地を整備した都市再生機構(UR都市機構)が発案。「オープンイノベーション」をテーマに“仕事のやり方“そのものからデザインしたと言う佐藤氏に話を聞いた。今回は後編。
※本記事の前編:『佐藤可士和が語る 「団地の未来」ブランディングの10年』から続いて、佐藤可士和氏が全面的に手掛けた北団地の改修やクリエイティブディレクションの今後について聞く。
――北団地の改修は全面的に(佐藤可士和氏が代表取締役を務める)SAMURAIがデザインを手掛けていらっしゃいますが隈研吾さんとはどのように分担されたのですか。改修に当たりどのような課題がありましたか。
佐藤可士和氏(以下、佐藤) 集会所以外の建築は誰にしようかと話していたときに、隈さんから「北(団地)は可士和さんがいいんじゃない」と指名していただいて(笑)。実は僕自身も下見の段階でこの公園(北団地の広場)はリニューアルしたほうがいいと考えていて、担当したいとは思っていたんです。
公園はほとんど使われていませんでした。昼間なのに誰も遊ばないし、夜は真っ暗で怖くて通りにくい。周囲が高く伸びた植栽や柵で囲まれた閉鎖的な場所でした。植栽については、建築当時は低木だったものが伸び切って高木になってしまっていて、それが密集することでものすごく雰囲気を重くしてしまっていたんです。例えて言えば団地のブラックボックスのような場所でした。せっかくの広い空間がまったく活用されていなかったのでもったいないなと。
――リニューアル工事を経て、北団地は2020年秋に生まれ変わりました。団地カフェや団地ライブラリーのあるサンクンガーデンや、住棟とつながった芝生広場など、統一感がありますね。
佐藤 住棟、照明、植栽、広場を全体の空間として捉えて一体感を出すことを意識しました。これまでのUR都市機構ではそれぞれ部署が分かれていたのでそれが難しかったのです。北団地の改修で特徴的なのは、何も足していないことです。ほとんど余分なものをそぎ落してデザインしています。
まず公園の柵を取り払い段差もすべてなくしてフラットにしてシームレスにつながるようにしました。さらに、芝を敷きウッドデッキを設置することで寝転がったり座ったりできるスペースも作りました。例の古い植栽は植え替え、団地と広場の間にあった使わなくなったプールの壁も取り払いました。
建築も環境もパッケージやロゴのデザインと同列のメディア
――分断していたものをなくしていったんですね。
佐藤 そうですね。一体の空間にして光も全部変えました。照明は近田玲子さんがすべて手掛けてくださいました。
道路も舗装し直しました。色や質感もかなり検証して決めましたし、芝生と道路をつなぐ通路についても細部までこだわりました。
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