社員、役員、パートナーに至るまで全員が、マーケター集団として知られるプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)出身者。そんなマーケティングコンサルティング会社がM-Force(東京・渋谷)だ。同社は2021年1月から、顧客起点のマーケティング戦略立案を支援するツール「9segs analyzer」の提供を始めた。同社取締役の西口一希氏が考案したマーケティングフレームワーク「9segs」を軸にしたツールだ。

(写真/Shutterstock)
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 9segsとは、自社や競合の顧客層を9つの主要な顧客セグメントに分類し、事業成長のためにアプローチすべき層を明確化するためのフレームワーク。このフレームワークはブランドや商品の認知の有無、購買の有無、現在の購買頻度などで顧客層を9分類し、その分類に沿ってマーケティングでフォーカスすべき層を明確化し、マーケティング戦略の立案に生かす。

 顧客層の分類の内訳は、まず大きく以下に5分類できる。

  • ロイヤル顧客:繰り返し商品を購入
  • 一般顧客:購入頻度は低いが継続購入
  • 離反顧客:以前は購入していたが今は購入していない
  • 未購買顧客:商品やブランドを認知しているものの購買経験がない
  • 未認知顧客:認知、購入経験が共にない

 これらの分類を次回購買意向、つまりブランド・商品を優先選択する意向の高低で「積極」と「消極」に2分類する。例えば、購買経験があり、購買頻度と次回購買意向が共に高い場合は「(1)積極ロイヤル顧客」に分類され、(1)よりも次回購買意向が低い顧客は「(2)消極ロイヤル顧客」に分類されるといった具合だ。ただし、認知がなく、購買経験がない層はすべて未認知顧客に分類されるため、全部で9分類となる。

西口一希氏考案のマーケティングフレームワーク「9segs」は顧客を9分類して、その分類ごとにマーケティング戦略を検討しやすくする
西口一希氏考案のマーケティングフレームワーク「9segs」は顧客を9分類して、その分類ごとにマーケティング戦略を検討しやすくする

 顧客層をこれらのセグメントに分類することで、どの顧客層にフォーカスしたマーケティング施策をすべきかを検討する材料になる。例えば、ブランドや商品は認知しており、利用したいとは考えているものの購買に至っていない(7)積極認知・未購買顧客が多かったとしよう。お菓子・パンづくりの材料や器具の通販サイト「cotta」は、まさにこの層が多かった。

 サービスを認知しており、ブランドの選択意向が高い層が多いにもかかわらず、購買層に転換しなかった理由は、サイトのコンテンツがお菓子づくりの玄人向けに寄りすぎていたことだ。これが初心者に対して心理的なハードルとなっていた。そこで、誰でも簡単につくれるパンづくりキットの無料配布や、失敗しないレシピなど初心者向けコンテンツの充実で心理的ハードルを下げたことで、新規顧客の獲得につながった(関連記事「アマゾン、楽天を抜いたマーケ戦略 顧客分析の限界を乗り越えたcotta」)。

P&G的な発想でマーケティングをしやすくする

 これは極めてP&G的な発想だ。P&Gのマーケティングの大元にはWho(誰に)、What(何を)、How(どのように売るか)の頭文字を取った「WWH」と呼ばれるマーケティングフレームがある。9segsによってフォーカスする層が決まれば、おのずとWhoが明確になる。このように9segsを活用することで、顧客起点でマーケティング戦略を立案しやすくなる。

 また、共通のKPI(重要業績評価指標)を組織横断で持てるようになる。例えば、マーケティング施策の対象が積極認知・未購買顧客であれば、施策によってどれだけ購買層に移行させられたかどうかがKPIになる。「縦割りの組織ではそれぞれが違うKPIを見てしまいがちだ。顧客を中心に見ることで、視点が共通化され一体感が生まれる」(M-Force代表取締役の長祐氏)。マーケティング部、広報部、宣伝部など顧客コミュニケーションにかかわる部門が共通の指標で動くことで、一貫性のあるマーケティング施策の実行につながりやすくなる。

 こうした9segsを活用したマーケティング戦略の立案と、その成果を分析するツールが9segs analyzerだ。「顧客戦略の立案は、これまで職人芸のように思われていた。ただ、我々はそうではないと思っている。仕組みを体系立て、ソフトウエアとして提供することは可能と考えた」とディレクターの竹中野歩氏は開発背景を語る。従来はコンサルティングサービスで提供してきた9segsを活用した顧客戦略立案を、より幅広く提供するためにツールを開発した。

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