街にいる人と自宅の部屋にいる人が、会話をしながら一緒に観光やウインドーショッピングができる――。こんな驚きの体験が可能になる技術を、ベンチャー企業のMESON(東京・渋谷)と博報堂DYホールディングスが開発している。既に渋谷の街を舞台にした実証実験も実施。そこには、距離を超えた新しいコミュニケーションの形とビジネスチャンスが眠っていた。
渋谷の街頭にいる人と、遠く離れた自宅からバーチャル空間内の渋谷に遊びに来ている人が、一緒に会話をしながら街歩きできる。そんな未来的な生活を楽しめる技術が実用化に迫っている。
その正体は、ベンチャー企業のMESONと博報堂DYホールディングスが共同で開発を進めるプロジェクト「GIBSON(ギブソン)」。AR(拡張現実)とVR(仮想現実)の技術を掛け合わせることで、距離を超えたコミュニケーションを生み出している。
GIBSONでは、現実世界の物体や空間の情報をコピーし、サイバー空間に同じように構築する「デジタルツイン」と呼ばれる技術を活用。現実世界にいる人と遠隔地からこの仮想空間に入ってきた人とが、あたかも同じ空間にいるかのように体験できるのが特徴だ。2020年12月にプロジェクトが発表され、翌21年3月には実際に渋谷の街を使った実証実験が行われた。
では、どんな体験ができるのか。渋谷の街での実証実験を例に説明をしていく。
まず、リアルな渋谷にいる人は現実世界が透けて見えるARグラスをかける。そうすることで、ARグラス越しに仮想空間内の情報がリアル渋谷に重なるように表示される仕組みだ。
一方の遠隔地にいる人は、VRゴーグルを装着し、リアル渋谷のデータを基につくられた仮想空間内のバーチャルな渋谷に入り込む。
これだけだと、2人はただ別々にリアルな渋谷とバーチャルな渋谷にアクセスしているだけだ。だが、GIBSONでは、この2人が同じ空間内にいるようにコミュニケーションが取れる。
ARグラスをかけた“リアル渋谷民”には、グラス越しに遠隔地にいるVRユーザーのアバターが現れる。一方のVRゴーグルをかけた“バーチャル渋谷民”には、ゴーグル内に映し出された仮想世界にリアル渋谷にいるARユーザーのアバターが現れる。グラスやゴーグルでそれぞれの体験者の動きや声を取り込み、それがアバターによって再現され、あたかも一緒にいるかのように感じられるのだ。
会話やジェスチャーがリアルタイムに伝わり、隣にいるような錯覚に
実際にVRゴーグルを装着してバーチャル渋谷民になってみた。
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