創業300年の生活雑貨メーカー、中川政七商店(奈良市)がデジタルマーケティング支援事業に参入する。同社は2021年5月19日、マーケティング支援のペイフォワード(大阪市北区)、システム開発会社のVeBuIn(茨城県つくば市)の2社と共同で、新会社MONJUを設立。同社を通じて、ブランディング特化のCRM(顧客関係管理)ツール「Synergy!BCS」を21年7月から提供する。顧客のブランドに対する好意度を測りながら、CRMを実施できるツールだ。

共同でCRM(顧客関係管理)ツールを開発した中川政七商店(奈良市)会長で第十三代の中川政七氏(左)、シナジーマーケティング(大阪市北区)の田代正雄社長(右)
共同でCRM(顧客関係管理)ツールを開発した中川政七商店(奈良市)会長で第十三代の中川政七氏(左)、シナジーマーケティング(大阪市北区)の田代正雄社長(右)

 新会社のMONJUが提供するSynergy!BCSは、ペイフォワード子会社でCRM支援事業のシナジーマーケティングが提供する既存のCRMツールを基に、中川政七商店の創業家出身で会長の中川政七氏のアイデアを盛り込んでカスタマイズしたもの。

 ツールの具体的な機能紹介の前に、なぜ中川政七商店がCRMツールの開発に至ったかを説明したい。今でこそ、大手商業施設などにも生活雑貨販売の直営店を構える中川政七商店だが、生活雑貨部門はかつて赤字のお荷物部門だった。これをブランディングによって立て直したのが中川氏だ。卸売り中心から、直営店を持つSPA(製造小売り)業態へと転換を図り、直営店を通じてブランドの持つ価値観や世界観を伝え、ブランドを確立した。2009年から、「日本の工芸を元気にする!」というビジョンの下、自社のリブランディングの知見を生かし、技術はあるがブランドづくりに悩む日本の工芸品メーカーを支援する経営再生コンサルティング事業を展開してきた。

 自社にとどまらず、コンサルティング先のブランディングを手掛けてきた中川氏だが、近年は「ブランドをつくっていく中で、デジタルは手段としての重みが増している」と感じているという。中川政七商店も自社サイト上に「中川政七商店の読みもの」というページを設け、さまざまな情報を発信するなど、デジタルを活用したブランディングに力を入れている。デジタルが重要性を増す理由は、中川氏が考えるブランディングに必要な「製品」「ライフスタイル」「ライフスタンス(企業ビジョン)」という3つのレイヤーに関係している。

3つのレイヤーのうち「ライフスタンス」がより重要に

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