コロナ禍で急速に広まったテレワークは、仕事の過程が見えづらく、モチベーションを担保することが難しい。一人ひとりが自ら考え動く「自律型組織」は、テレワークでも生産性を担保する1つの解決策だろう。動画配信サービス「Netflix」を運営するNetflix HRビジネス・パートナーの渡邉ニコル氏と、ビジネスSNS「Wantedly」を運営するウォンテッドリーCEO(最高経営責任者)の仲暁子氏が対談で、自律型組織をテーマに語り合った。
Netflix HRビジネス・パートナー(以下、HRBP、人事部門 ディレクター)
ウォンテッドリーCEO
コロナ禍でテレワークが一気に普及した。テレワークは、周りの仕事の様子が見えづらく、ちょっとした会話も減ってしまい、モチベーションや生産性が下がっている人もいるだろう。このような状況下で組織は、外部からの働きかけでモチベーションを管理する「管理型組織」から、個々人の内発的動機により突き動かされる「自律型組織」へと進化することが求められている。「自律型組織の魅力」を焦点に当てプロダクト開発を行うウォンテッドリーと、自律型組織作りを実践し成長を遂げてきたNetflix(東京・港)に、自走する組織の作り方やテレワークで増えた「暗黙知」の共有方法を聞いた。
――2021年4月末時点での働き方について教えてください。
仲暁子氏(以下:仲氏) 2020年4月の1度目の緊急事態宣言以降は、1度フルリモートになり、現在は基本テレワークで出社比率を3割程度に抑えています。ただ、0→1で物づくりをするシーンではやはり、対面でのコミュニケーションが重要だと思っています。
一方、エンジニアが一人でコーディングする場合など、業務や人によってはテレワークでも生産性が落ちないどころか上がることが分かりました。コロナ禍の状況を鑑みながら、対応も進化させているところです。
渡邉ニコル氏(以下:渡邉氏) Netflixでは、もともとフレキシブルな働き方が文化として根付いています。コロナ禍では社員の安全や健康を最優先し、ほとんどがテレワークで、会社への出入りも最低限にしています。スムーズにテレワークに移行できたのは、フレキシブルな働き方についての考え方が浸透し、テクノロジー面でもある程度態勢が整っていたことが大きかったです。
Netflix文化の1つに「コントロールではなくコンテキストを」というものがあります。メンバー皆が同じ情報や課題、目標を共有しているという状態が、コンテキストを共有している状態。テレワークでも十分に共有できるよう工夫することは、テレワークが続く中で課題に感じています。
――テレワークで工夫したことを教えてください。
仲氏 社員同士のコラボレーションでは、Miro(米ミロのホワイトボードツール)など、デジタルツールを導入して解決していきました。
テレワークではバリューやビジョンの共有、言い換えればどの山にどうやって登るかの共有が改めて大切だと思いました。これまでは、OKR(Objectives and Key Results)と呼ばれる目的設定の手法を使ったり、「DEMO DAY」という全社ミーティングで方針を示したりしていました。コロナ禍で対面でのミーティングがかなわなくなり、Zoomを使って試みましたが伝わりづらさを実感。社内報ツール「Story」を開発し、山の登り方などを定期的に発信することで皆がテレワークでも迷わないよう心掛けています。
渡邉氏 同感です。ビジョンやゴール、課題の共有は、これまで以上に工夫しなければならないと思っています。ビデオ会議だけでなく、Slackなどのチャットツールやメールなど、多くのチャネルから情報共有ができるようにしています。
経験によって、チーム内で前提とする知見は蓄積されていきますが、テレワークではしっかり共有できているかが見えづらいため、意識的に共有しなければと思っています。
具体例としてNetflixでは、社員それぞれの自立した意思決定を尊重する文化があります。良い決断ができるよう社員自ら情報を取得し、状況や背景、経緯などのコンテキストを吸収しなければなりません。会社にとってベストな決断をするために、文化そのものについて語り合うカルチャークラブという少人数で話す場をオンラインでも設けています。
もう1つの工夫としては、オンラインで希薄になりがちなチームの“一体感”を醸成するため、イベントなどを意識的に開催しています。20年9月は日本でサービスを開始して5周年でした。従来であればどこか会場に集まって盛大にお祝いするところを、今回はオンラインで実施。5年を振り返るスライドショーや米国のリーダーからのお祝いコメントを流すなど、プログラムも模索しながら作り上げましたが、結果喜ばれるすてきな会になりました。
仲氏 ウォンテッドリーでも年に1回、9月にイベントを実施しており、20年は初のオンライン開催となりました。このイベントは新入社員が担当しますが、オンラインイベントの企画という前例がないチャレンジとなりました。
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