新型コロナウイルス感染症の影響でアパレル業界が苦境に立たされる中、過去最高益をたたき出したのが、衣料品通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するZOZOだ。同社は2021年4月27日、21年3月期の決算を発表。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、洋服購入におけるデジタルシフトが進み、ユーザーが増加したことが好調の要因だ。発表会ではさらなる成長を目指し、3つの戦略を明らかにした。
ZOZOの21年3月期の売上高は前期比17.4%増の1474億200万円、営業利益は前期比58.3%増の441億4400万円と過去最高となった。好調の要因は、新型コロナウイルス感染症拡大を契機に進んだECサイトでのアパレル販売といったデジタルシフトや、19年12月に出店したヤフーが運営するECモール「PayPayモール」の店舗の急成長などにある。特にZOZOTOWN PayPayモール店は、新たな決済方法として決済サービス「PayPay」を20年8月から導入。それに加えて21年3月にPayPayが実施した大型キャンペーン「超PayPay祭」の影響もあり、21年3月28日に単日ではあるもののZOZOTOWNの本店の売り上げを超えたという。
ZOZOはさらなる成長を見据え、3つの戦略を発表した。1つ目の戦略として挙げたのは、「買う以外のトラフィック」を増やすこと。ZOZOの中核事業は言わずもがな、衣料品のネット通販だ。当然、利用者の目的の大半は商品を購入することにある。その一方、ZOZOはコーディネート投稿アプリ「WEAR」を開発するなど、ファッションに関する情報を取得する“メディア“としての側面にも投資をしてきた。他人のコーディネートやファッション情報を目にすることで、新たな商品との出合いの機会を創出し、消費につなげるのが目的だ。こうしたメディアとしてのZOZOTOWNの利用を、買う以外のトラフィックと定義している。
新たな戦略では、メディアとしての側面を強め、購入を目的としない訪問者の拡大を狙う。「商品を買わなくても、『ZOZOTOWNって楽しい』というふうに、毎日来てもらえるようなサイトを目指したい。ファッション雑誌に代わるようなネットにおける読み物になり得ると考えている」と澤田宏太郎社長は言う。
パーソナライズデータをコンテンツ開発に活用
その戦略の要となるのが「パーソナライズデータ」だ。パーソナライズデータとは、すなわち体のサイズデータを主に指す。ZOZOは身体データを測定するためのデバイスを複数開発してきた。着用してスマートフォンで写真撮影するだけで、全身のサイズを測定できる「ZOZOSUIT (ゾゾスーツ)2」、同様に3D化データを用いて、足の形やサイズを測る「ZOZOMAT」は代表例。測定したデータに合わせて、適切なサイズの商品を購入できる仕組みづくりに腐心してきた。
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