東京大学先端科学技術研究センター(以下、先端研)の研究部門「先端アートデザイン社会連携研究部門」が、2021年4月から本格的に活動を開始した。同部門は、資生堂や住友商事、ソニーといった民間企業9社と共同で立ち上げたもの。現在はオンラインを中心に、週に2回ほどディスカッションを実施している。

東京大学先端科学技術研究センターの6カテゴリー40もの分野の多様な研究と、アート、デザインとの融合を目指す「先端アートデザイン社会連携研究部門」
東京大学先端科学技術研究センターの6カテゴリー40もの分野の多様な研究と、アート、デザインとの融合を目指す「先端アートデザイン社会連携研究部門」

 2021年1月に開設した先端アートデザイン社会連携研究部門は、企業と研究者、アートとデザイン領域のプロフェッショナルが横断的な研究グループを組織。多様な視点から新たなアイデアを生み、スピーディーな社会実装につなげるのが狙いだ。7月下旬には、和歌山・高野山にある金剛峯寺の協力で、現地での会議も予定している。

 先端アートデザイン社会連携研究部門と協力する9社は、資生堂、住友商事、ソニー、日本たばこ、マツダ、ヤマハ、ヤマハ発動機、リクルート、BLBG(ブリティッシュ・ラグジュアリーブランド・グループ)。

 先端研は「情報」「社会科学」「バリアフリー」「材料」「環境・エネルギー」「生物医化学」の6カテゴリー40もの分野の、多様な研究領域をカバー。1987年の創立以来、いち早くイノベーションの追究に乗り出し、多様な人々を幸せにするというビジョンを掲げてきた。

自然との共生を軸に考えていく

 近年の先端研は、例えば、熊本県のキャラクター「くまモン」のVR(仮想現実)化の研究も行っており、くまモンも先端研の「せんたん研究員」だ。先端研の所長を務める神崎亮平氏は、「先日、くまモンが筆頭著者で論文を書いた。ほかではやらないようなことも、うちの研究センターは実行する」と言う。

 神崎氏が所長に就いたのは16年。それ以来、先端研全体に共通した科学技術の課題に気づき始めたという。それは従来の科学技術のアプローチが、人を視点にしてきたこと。「例えば環境問題に対しても、さらなる科学技術で解決しようとしてきたが、それでは根本的な課題解決にはならない」と神崎氏は見る。

 人中心から自然中心にシフトし、自然と共生するというアプローチの先に、新たな科学技術の在り方が見えるのではないか。そんな仮説の先に立ち上げたのが、今回の研究部門だ。科学技術に、アートやデザインといった感性の領域から新たな視点をもたらし、さらに多くの人々の幸せに貢献したいと考えている。

アートとデザインの視点から「問い」を立てる

 先端研の所長、神崎亮平氏と、参加企業の1社であるソニーのクリエイティブセンター センター長の長谷川豊氏に、ソニーが参加する意図や同研究部門の具体的な取り組みを聞いた。

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