コロナ禍による外出自粛の状況にもかかわらず、異例のヒットを記録した展覧会がある。2020年末から21年にかけて開催されていた、世界を舞台に活躍したデザイナー・石岡瑛子氏の回顧展だ。しかも来場客の多くが若者だという。その理由は?
石岡瑛子氏(1938~2012年)は1960~70年代に資生堂やパルコ、角川書店などの広告で社会現象を起こし、80年代からニューヨークに渡って映画や演劇、サーカスなど多岐にわたる分野で活躍。マイルス・デイヴィス『TUTU』のジャケットデザインでグラミー賞受賞(87年)、映画『ドラキュラ』の衣装でアカデミー賞衣装デザイン賞を受賞し(93年)、2008年には北京五輪開会式で衣装デザインを担当した。
興味深いのは、同じ人物に焦点を当てた展覧会が東京都現代美術館と銀座のggg(ギンザ・グラフィック・ギャラリー)でほぼ同時期に開催されたこと。前者は初期の広告作品から映画衣装に至るまで展示する大規模な回顧展なのに対し、後者はデビューからニューヨークに渡るまでのグラフィックデザインの仕事に焦点を当てている。さらに、20年11月には評伝も発売されており、500ページ超の大作でありながら増刷を重ねるなど好調な売れ行きだという。
当時の活躍を知らない若者が殺到
東京都現代美術館での回顧展「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」を企画した同館学芸員の藪前知子氏によると、「開催当初はメディアの反応がほとんどなく、国際的に活躍した方であるにもかかわらず、日本ではほとんど忘れられた存在だと思わされた」という。ところが、会期後半からSNS上で来場者のコメントが拡散されるようになり、「ピーク時には1分に1回誰かがつぶやいているのではというくらいコメントがあふれていた」(藪前氏)。
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