「微アル」という新たな市場の創出
海外では節度を持って、自分らしくお酒を楽しむスタイルが浸透しているといわれる。お酒を飲めるが、あえて飲まない、もしくは積極的に低アルコールやノンアルコールを選ぶスタイルを「ソバーキュリアス」と呼ぶ。そんな文化を日本でも広げようと20年9月、「MARUKU」というノンアルコール飲料専門ECサイトがオープンした。主宰するのは小説家の桜井鈴茂氏だ。国内外のえりすぐりのノンアルコールビールを取りそろえ、オリジナルの0.00%の国産ビールも販売している。
アサヒビールも海外の動向を踏まえ、アルコール0.5%の「微アル」というカテゴリーを新たに創出すると発表。第1弾の商品として、21年3月末、アルコール0.5%の「アサヒ ビアリー」を発売した。ビールを醸造してから、アルコール分のみを取り除く「脱アルコール」という製法により、本格的なビールのような味わいを低アルコールで楽しめる商品だ。アルコール0.5%は炭酸飲料に分類されるが、ビールテイスト飲料として販売していく。「ゴクゴク飲み干すのではなく、自分の時間を楽しみながらゆっくり飲む。そんなお酒との新しい関わり合い方を提案していきたい」と話すのは、アサヒビール マーケティング本部 新価値創造推進部の小野祐花里主任。
飲酒運転を撲滅したいという思いから誕生したノンアルコール市場は、酒類の新しい楽しみ方や文化へと発展している。キリンビールはCSV(共通価値の創造)経営の一環である「健康」と「酒類メーカーとしての責任」の取り組みとして、今後もノンアルコール飲料に注力していく計画だ。一方、サントリーにとってノンアルコール飲料の位置付けは、酒文化を絶やさないためにも、酒類から離れる需要を受け止める存在だという。
アサヒビールは、飲む人も飲まない人もお互いが尊重し合える社会の実現を目指し、「スマートドリンキング」というプロジェクトを立ち上げた。ビアリーだけでなく、今後は微アルの商品を拡充させていく予定。25年までに、アルコール度数3.5%以下の商品構成比を20%まで拡大することを目指すという。