2021年2月26日、リユース大手のコメ兵は東京都港区の「KOMEHYO青山店」を同区内で移転し、「KOMEHYO AOYAMA」と店名を変更。サステナビリティー(持続可能性)とアートをテーマに掲げ、リニューアルオープンした。持続可能な社会づくりの輪を広げるコメ兵の企業姿勢を示すと同時に、新たな購買体験の創出にも挑戦する。

「KOMEHYO AOYAMA」の2階にあるギャラリー「MAGO GALLERY AOYAMA」の内観。元はブティックの物件だった。床はそのまま利用し、壁は白塗装と石こうボードで仕上げた
「KOMEHYO AOYAMA」の2階にあるギャラリー「MAGO GALLERY AOYAMA」の内観。元はブティックの物件だった。床はそのまま利用し、壁は白塗装と石こうボードで仕上げた

 リユースはごみの削減につながり、サステナブルな事業として注目されている。新店舗はこれにアートを連動させることで、サステナビリティーに対する顧客の関心が高まるようにした。買い取りや販売を行う1階のフロアの他に、2階にはアーティストのマゴクリエーション(東京・中央)代表、長坂真護氏の作品を取り扱うスペースとして「MAGO GALLERY AOYAMA(マゴギャラリー・アオヤマ)」を置いた。

廃棄物をアート作品に

 長坂氏は「サステナブル・キャピタリズム(持続可能な資本主義)」という概念を提唱。ガーナの電子廃棄物から作品を生み出し、作品の利益を現地に還元している。作品を所有することでごみが減り、社会貢献にもつながる。

店舗の外観。ディスプレー画面には、ガーナの首都、アクラ近郊にあるアグボグブロシー地区の様子を映したドキュメンタリー映画の一部を流している。同地区は電子機器の不法投棄場として知られ、ごみを燃やす煙が大気汚染の原因にもなっている
店舗の外観。ディスプレー画面には、ガーナの首都、アクラ近郊にあるアグボグブロシー地区の様子を映したドキュメンタリー映画の一部を流している。同地区は電子機器の不法投棄場として知られ、ごみを燃やす煙が大気汚染の原因にもなっている

 長坂氏は作品を制作して売って得た利益で学校や文化施設を設立したり、廃棄物を燃やして出る大量のガスを防ぐために850個のガスマスクを届けたりした。この行動にコメ兵は共感し、今回の取り組みにつながった。

アーティストの長坂真護氏は社会性のある事業を展開することで作品の価値向上と、関わるすべての人が幸せになる仕組みを広めていきたいという
アーティストの長坂真護氏は社会性のある事業を展開することで作品の価値向上と、関わるすべての人が幸せになる仕組みを広めていきたいという

 「コメ兵では70年間、サステナビリティーにつながるビジネスを行ってきた。同じ思いを持った仲間として、当社から『やりませんか』と持ちかけた」とプロジェクトを統括したコメ兵ホールディングス執行役員マーケティング本部長の藤原義昭氏は話す。

コメ兵ホールディングス執行役員マーケティング本部長の藤原義昭氏
コメ兵ホールディングス執行役員マーケティング本部長の藤原義昭氏

 長坂氏は、フランチャイズビジネスの仕組みをアーティスト活動に応用し、加盟店チェーン方式で国内6カ所のギャラリーとオーナー契約を結び、開業している(21年2月26日時点)。コメ兵とは20年9月に初めて顔を合わせ、半年を待たずに長坂氏のサステナブルなアートとコラボレーションした新店舗の開店につなげた。

 この他、新店舗では内装面積の98%にリユースの建材や廃プラスチック、繊維系廃材などの素材を使用。顧客が座る椅子などデザイン性を持たせた家具にも廃材を活用しており、ギャラリー以外の1階も含めて環境に配慮したサステナブルな空間に仕上げたという。

スラム街の中に立てた「E-wasteツリー」というアート作品を模した作品。貼り付けた廃材には家庭用ゲーム機器のコントローラーなどが見える
スラム街の中に立てた「E-wasteツリー」というアート作品を模した作品。貼り付けた廃材には家庭用ゲーム機器のコントローラーなどが見える
椅子や台に用いる再利用素材は、廃材を使ったアート作品との一体感を出している
椅子や台に用いる再利用素材は、廃材を使ったアート作品との一体感を出している
長坂氏はアニメーション作品のプロジェクトも手掛けており、写真はそのキャラクター「ミリーちゃん」
長坂氏はアニメーション作品のプロジェクトも手掛けており、写真はそのキャラクター「ミリーちゃん」

新たな買い物体験にもつなげる

 新店舗は、コメ兵のECサイトを活用した集客強化の実験場でもある。

 リニューアル前は約800~1200点の商品を展示する売り場があったが、新店舗には展示用の一部商品以外の商品在庫は置いていない。

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