駅構内などで自動販売機を運用するJR東日本ウォータービジネス(東京・品川)が、AI(人工知能)を活用して売り上げ向上、オペレーション最適化を図っている。AIの指示で品ぞろえを見直した自販機では、比較対象機と比べて最大約40%の販売増を記録。コロナ禍で移動需要が減少する中でも、好調な実績をたたき出している。

JR東日本ウォータービジネスが展開する自社ブランドの自販機「acure(アキュア)」
JR東日本ウォータービジネスが展開する自社ブランドの自販機「acure(アキュア)」

 AI連携の自動販売機で売り上げ増を記録したのは、全体の60%弱――。JR東日本ウォータービジネスが2020年12月から本格導入したAIシステムの戦績だ。

 JR東日本ウォータービジネスは、自社ブランドの自販機「acure(アキュア)」の約8000台を中心にJR東日本管内の駅で飲料の販売を手がける。同社は、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)Data61からスピンオフした小売り向けAIシステム会社のHIVERY(ハイバリー)と組み、2017年から自販機におけるAI活用の実証実験を続けてきた。20年12⽉から関東エリアの約6000台に本格導⼊を始め、21年3⽉時点で約1600台の自販機に対してハイバリーのAIを活用した商品ラインアップを実施している。

 AI活用の目的は、自販機の売り上げ増とオペレーションの最適化だ。JR東日本ウォータービジネスが展開する自販機は人通りが多い駅ナカ立地が中心。街中に設置されている自販機は月6万~7万円売り上げれば優秀な部類だが、「当社の場合は1カ月で最大300万円に達する自販機もある」(JR東日本ウォータービジネス自動販売機事業部の東野裕太氏)。販売量が多いため、AI活用でよく売れる商品を見極め、かつ欠品による販売機会の損失を防ぐことは、経営に与えるインパクトが非常に大きい。

 また、JR東日本ウォータービジネスは、商品の補充や入れ替え、現金・ゴミ回収といった自販機の運用はエリアごとの有力オペレーターに委託している。自販機は最大42商品をラインアップでき、そのうち7割をJR東日本ウォータービジネスによる指定商品、残り3割をオペレーターによる自由裁量で決める仕組みだ。

 実はこの3割部分の商品構成でも、売り上げは大きく変わる。例えば、喫煙所の近くにある自販機には缶コーヒーを多く配置する、女性専用車両が目の前に止まる自販機では健康系の飲料を入れるといった経験則がある。熟練のオペレーターのスタッフであれば、ロケーションに合わせてうまく商品を選定し、売り上げ増につなげられるが、新米スタッフに同じパフォーマンスは望めない。そこをAIシステムで補完しようというわけだ。

 もともとJR東日本ウォータービジネスは、膨大な自販機ビッグデータを保有している。15年にはアキュアの自販機全台がSuicaなどの交通系電子マネー対応になっており、現金決済も含めて年間で2億件を超える購入商品のPOS(販売時点情報管理)データを取得している。「いつ」「どこで」「何が売れたか」に加え、アキュアメンバーズ登録会員については年齢・性別データも取れる状態だ。

 以前から、このビッグデータを基に各オペレーターと密に連携し、商品選定などに生かしてきた。だが、「エクセルレベルでの分析で、限界があった」(東野氏)という。そこで手を組んだのが、ハイバリーの自販機向けAIソリューションである「HIVERY Enhance」だった。

AIが導き出す2つの“答え”とは?

 ハイバリーのAIシステムは、膨大なPOSデータを取り込み、「どの商品を、どの自販機に、どのタイミングで交換すればいいか」をはじき出す。そのAI システムの推奨を参考にオペレーターは商品の入れ替えや補充作業を行う。ここでAIシステムが導き出すのは、2つの方向性の“答え”だ。

ハイバリーのAIシステムの連携イメージ
ハイバリーのAIシステムの連携イメージ

このコンテンツ・機能は有料会員限定です。

有料会員になると全記事をお読みいただけるのはもちろん
  • ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
  • ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
  • ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
  • ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー
ほか、使えるサービスが盛りだくさんです。<有料会員の詳細はこちら>
17
この記事をいいね!する